青色申告のメリット6選!税理士が伝える知識とは?

ビジネスマン

確定申告には、青色申告と白色申告の2つの申告方法があり、青色申告は白色申告に比べて詳細な帳簿付けが必要となり大変ではありますが、その分さまざまな優遇措置を受けることができます。知らないままでは大きく損をしている場合がありますので、今回は、税理士とて伝えておきたい青色申告の知識やメリットを解説します。






1)青色申告とは

【1】青色申告の概要

確定申告には、1月1日から12月31日までの所得金額を求めて所得税額を確定させ、過不足分を納付、または還付するものです。申告方法には、青色申告と白色申告の2種類あり、青色申告は、原則、起業の日から2ヵ月以内に、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した事業主が利用できる申告方法となります。

青色申告は、事前の申請が必要だったり、ルールに従った帳簿を作成したりしなければいけませんが、青色申告特別控除や赤字を3年間繰り越しできたり、減価償却費を30万円まで一括計上できるといったメリットがあります。

一方、白色申告は事前の申請は必要ないものの、税制面でのメリットはありません。2013年までは、前々年分または前年分の所得が300万円を超えなければ、記帳と帳簿書類の保管が義務ではなかったので、白色申告は大きなメリットでした。

しかし、2014年から単式簿記で記帳した帳簿書類の保管が義務付けられるようになり、帳簿に記帳する手間にそれほどの違いがなくなってしまったため、青色申告を利用したほうが手間も大きく変わらずメリットを受けられるので、やらないと損と言えます。

【2】青色申告を利用できる方

青色申告を利用できるのは、次のいずれかに該当する方です。

(1)事業所得がある方

事業所得がある方は、青色申告の対象となります。事業所得とは、農業、漁業、小売業、サービス業などの事業から生じる所得のことです。

(2)不動産所得がある方

不動産所得とは、不動産の賃貸のうち、事業規模のものを指します。事業規模とは、アパートなどなら独立した室数が概ね10部屋以上、独立家屋の場合は概ね5棟以上を指します。また、土地や建物といった不動産の貸し付け以外にも、不動産に関連する地上権の設定および貸し付け、船舶や航空機の貸し付けも、不動産所得に該当します。

しかし、不動産売買によって生じた所得は譲渡所得となるため、青色申告の対象となりません。

(3)山林所得がある方

山林所得とは、山林を伐採または立木のままで譲渡することによって生じる所得のことです。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合は、山林所得ではなく、事業所得か雑所得になります。

また、山林所得のある事業とともに、事業所得または不動産所得に該当する事業を行っていない場合は、青色申告の税制メリットである65万円特別控除は認められません。

ただし、10万円特別控除については山林所得のみでも受けることができます。

所得税の青色申告承認申請書

2)青色申告のメリット

【1】青色申告のメリットの種類

①青色申告特別控除
②青色事業専従者
③30万円未満の固定資産を一度に経費化
④貸倒引当金
⑤純損失(赤字)の繰越し
⑥純損失(赤字)の繰戻し

【2】青色申告特別控除とは

青色申告特別控除とは、決められた金額を所得から経費として控除できる制度です。控除できる金額は2種類で、10万円か65万円となります。10万円の特別控除を受ける場合は簡易簿記、65万円の特別控除を受ける場合は、複式簿記での記載が必要となります。複式簿記は、一般的な会社では当然つけているもので、簡易簿記より複雑な帳簿のことです。

ただし、提出期限である3月15日(土日の場合は月曜日)を過ぎてから申告した場合は、「損益計算書」と「貸借対照表」を添付しても、10万円の控除しか受けることができませんので、注意してください。

【3】青色事業専従者とは

青色事業専従者とは、従業員として働いた家族に支払う給与が必要経費にできる制度です。これを『青色事業専従者給与』と言います。

白色申告にも事業専従者がありますが、以下の金額に限られています。

・配偶者:86万円
・その他家族:50万円

一方、青色事業専従者は、支払った給与全額を経費にできるメリットがあります。

ただし細かな条件もあります。

・事業主と生活を一(いつ)にしている配偶者やその他15歳以上の親族

・事業に専ら従事している人に支払う給与については、仕事内容や程度等に照らして相当であると認められる金額

・適用と受けようとする年の3月15日までに『青色事業専従者給与に関する届出書』を提出することが必要

・その年を通じて6月を超える期間その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

特に難しいことはないかと思いますが、給与が相当であるかどかとは、簡単に説明すると事業で得たお金が月に100万円しかないのに、配偶者へ毎月100万円の給与を支払っているのはおかしいのでは?ということです。

青色事業専従者として給与の支払を受ける場合に注意してほしいことは、控除対象配偶者や扶養親族になれなくなるため、所得控除が受けられなくなるデメリットがありますのでどちらがお徳なのか比較して決めることが必要です。

【4】固定資産の経費計上

30万円未満の固定資産を一度に経費化できるようになります。たとえばパソコンなど10万円を超える備品は通常「固定資産」と呼ばれ、何年かにわけて少額ずつ減価償却という方法で処理する必要があります。しかし青色申告になれば、1個あたり30万円未満の少額減価償却資産に関しては、購入・使用した年度に一括して経費に計上できるという「少額減価償却資産の特例」が受けられます。

これにより、利益の多く出た年に30万円未満の資産を購入すれば、その年の経費として計上できますので、結果的に支払う税金を安くすることができます。ただし、注意すべき点は、パソコンやカメラ、事務机などたくさん買った場合、取得の合計金額が1年間で300万円未満になるようにしなければならないので、注意してください。

【5】貸倒引当金とは

貸倒引当金とは、事業から生じた売掛金(商品を売ったけどまだお金をもらえていない)や、貸付金などの賃金の貸倒れによる損失の見込額を経費にすることができるものです。つまり、取引先の倒産などの理由で債権(売掛金など)を回収できなくなった見込み額のこと言います。ただし、見込額は貸金の年末帳簿の価格5.5%以下の金額までしか該当しません。

【6】純損失(赤字)の繰越しとは

純損失(赤字)の繰越しとは、事業が赤字になってしまってもこの赤字分を翌年以降に持ち越して、翌年以降の黒字と相殺することができる制度です。

分かりやすい例で説明すると、昨年50万円の赤字が出たけど、今年は100万円の黒字だった場合、100万円-50万円=今年の所得は50万円にでき、この50万円分のみを課税の対象とできます。この繰越は、3年間利用することができます。

【7】純損失(赤字)の繰戻しとは

繰戻しは、先ほどの繰り越しとは逆の発想となります。昨年は100万円の黒字だったけど、今年は50万円の赤字だった場合、100万円-50万円=昨年の所得が50万円となり、この50万円分に課税されます。

昨年分の確定申告では100万円に課税された所得税を支払っているので、あらためて50万円分で計算されたあと、払い過ぎている一部が還付金として戻ってきます。

確定申告

3)青色申告を利用する際の流れ

青色申告を利用するためには、いくつかのステップをこなしていく必要があります。大まかな流れについて説明します。

【1】青色特別控除の改正について

令和2年(2020年)分以降の所得税申告について、青色申告特別控除の見直しが行われることになりました。冒頭で、青色申告特別控除が最大65万円受けられると説明しましたが、この金額が55万円に引き下げられます。

10万円も控除額が下がってしまうのはメリットが薄くなりますが、65万円のままにもできるので心配することはありません。ただし、そのためには以下の条件を満たすことが必要となります。

(1)その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付け及び保存を行っていること

(2)その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書の提出を、その提出期限までにe-Taxを使用して行うこと

難しく感じますが、要はパソコンで帳簿作成したデータをハードディスクやクラウドに保存し、そのデータを使いe-Taxで提出すればOKということです。

【2】所得税の青色申告承認申請書を提出

管轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を、起業の日から2ヵ月以内に提出します。給与を支払う専従者がいる場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」も併せて提出してください。

【3】記帳をする

日々の支出や収入など、事業で発生した金銭のやりとりを記帳します。記帳方法は、簡易簿記と複式簿記のどちらかを選択できます。65万円特別控除といった青色申告のメリットを最大限に利用するためには、複式簿記のような正規の簿記の原則に則った記帳が必要です。

ただし、複式簿記をつけなければならないわけではなく、単式簿記の帳簿を組み合わせることでも、正規の簿記になります。また、白色申告では、1日分の売上や支出をまとめて記載する簡易的な記帳が認められていますが、青色申告の場合は一つひとつ記帳する必要があります。

(1)複式簿記

複式簿記では、すべての取引を「借方」と「貸方」に仕訳して記帳します。

例えば、現金でペンを1本買った場合、複式簿記では「消耗品費(消耗品を買った)」と「現金(現金が減った)」という2つの項目について記帳します。なお、複式簿記は「発生主義」といい、取引が発生した時点で記入が必要です。

(2)簡易簿記

簡易簿記では、取引をいちいち仕訳する必要はありません。現金でペンを買った場合は、現金出納帳などに内訳と金額を記入して終了です。また、簡易簿記は現金の動きがあった時点での記入が認められています。これは、商品の納品日と入金日がずれる場合などに、入金日を基準に帳簿をつけることができるということです。

【4】青色申告特別控除を受けるための帳簿の種類

65万円の青色申告特別控除、10万円の青色申告特別控除、それぞれ必要な帳簿が違います。

(1)65万円の青色申告特別控除で必要な帳簿

65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記で帳簿をつけます。確定申告時には「貸借対照表」と「損益計算書」を作成・提出することになります。また、「総勘定元帳」や「仕訳帳」のほか、事業内容に応じて「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「預金出納帳」「経費帳」などの補助簿を作成・保管します。

(2)10万円の青色申告特別控除で必要な帳簿

10万円の青色申告特別控除を受けるには、簡易簿記で帳簿をつけます。貸借対照表や損益計算書を青色申告時に提出する必要はありません。「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」などを作成・保管します。取引が発生していない帳簿は、作成する必要はありません。

【5】帳簿や書類の保存について

作成した帳簿や書類は、一定期間保存しなければいけません。青色申告の場合、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの帳簿類は7年、請求書や見積書などは5年保存しなければならないと定められています。

また、預金通帳や小切手帳などの現金預金取引等関係書類に関しては、原則7年、前々年分所得が300万円以下の場合は5年保存することになっています。

【6】青色申告が取り消しになる場合

青色申告をすることによって得られるメリットは、当然、青色申告を取り消された場合、利用できなくなってしまいます。具体的には、以下のような場合に青色申告が取り消されることになります。

・税務署から帳簿の開示を求められたが拒んだ場合
・法律に則った記帳をせず、指導を受けても改善が見られない場合
・総所得金額の50%相当額以上の所得隠しをした場合

そのほか、悪質な帳簿操作があった場合などに青色申告が取り消されるケースがあります。税務署からの指導には素直に従い、帳簿の操作などはしないようにしてください。

お金と電卓

4)青色申告における「経費」とは

【1】経費の概念

「経費」というのは、事業を行う上で必要になる現金のことです。青色申告において所得税を算出する際、収入から経費を差し引くことができるため、経費をもれなく帳簿につけることは、節税や健全な事業活動につながります。

経費にできる項目にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものをいくつかご紹介します。

【2】消耗品費

消耗品とは、文具や日用品など、比較的安価で定期的に買替えが必要になる備品のことです。コピー用紙、文房具、プリンターのインクなどが消耗品費に該当します。

【3】旅費・交通費

仕事で移動が必要になった場合の交通費は、経費にすることができます。営業先や現場へ行く際の電車・バス・タクシー代などのほか、宿泊費なども旅費・交通費に該当します。

プライベートで外出する際の交通費は経費にならないため、いつ、どのような目的でどこへ行ったのかを後から分かるよう記録しておいてください。

【4】通信費

事業で必要なインターネット回線の代金や携帯電話料金のほか、切手やはがきの料金も通信費に該当します。

【5】接待交際費

取引先との会食やお中元、お歳暮、お祝い事があった際の贈り物などの代金も経費にすることができます。仕事関係の方に誘われて参加したパーティーなどの参加費用や手土産代などは、接待交際費として忘れずに経費計上してください。

【6】新聞・図書費

事業に必要な知識を得るための新聞代や、勉強のために必要な書籍代などを経費にすることができます。個人的な趣味で購入した本の代金は経費にすることができません。

【7】減価償却費

減価償却とは、経費を一定の割合で数年間にわたって経費計上する制度です。一定期間を経るごとに、段々とその価値が減少する建物や業務用機器などを経費計上する際に利用します。そのため、1点100万円以上の絵画など、時間経過が価値の下落に関わらない物については、原則として、減価償却の対象とはなりません。

また、使用期間が1年未満の物や10万円以下の物については、減価償却せずに一括で経費計上するほか、一定の要件にあてはまる30万円未満の減価償却資産については、全額を業務に使用した年の経費にすることができます。






まとめ

・青色申告の場合、最大65万円の特別控除が受けられる

・今年の赤字を翌年以降(個人事業主で最長3年間、法人で最長9年)の所得から差し引ける。

・「青色事業専従者給与」として家族への給与の全額を経費にできる

・貸倒引当金として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の5.5%以下の金額であれば、必要経費として認められる。

・少額減価償却資産の特例として、30万円未満の資産を取得した場合、一度に経費に計上できる。

・青色申告は、複式簿記による記帳をしっかり行う必要があり大変さはあるが、経営状態をはっきりさせることにもつながり、メリットにもなる。

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他