分社化で節税になる?その為の手順と注意すべき4つのコト

分社化とは、部門を会社本体から切り分け、独立子会社として新たな会社を設立することです。分社化による節税や経営上のメリットは大きいですが、その分、注意すべきデメリットもありますので、どのようなことに注意して行えばいいか詳しく解説します。






1)分社化とはどのようなことなのか?

【1】分社化とその目的とは

分社化の目的としては、通常、分社化は以下の3つの目的を達成するための手段として行われます。

(1)企業内部において、特定の事業部の業績拡大が著しい場合、より独立した権限を与えて責任を明確化することで、営業活動を行いやすくする。

(2) 買収した企業と買収された企業の企業文化が合わない等、相乗効果が見込みにくい軋轢のリスクがある。

(3)それぞれの組織をスリム化し、コスト削減や節税対策を実現する。

【2】分社化の事例

直近の有名な分社事例としてはアメリカにおける、インターネットオークションを運営するイーベイが、子会社でクレジットカード決済サービス運営のペイパルを分社した事例があります。

この事例の場合は、両社の間で成長戦略に対する意見の相違が生じており、分社することでペイパルの独立性を高めることが目的となるため、上記にあげた(3)の目的に該当すると言えます。

ペイパルは株式上場を目指しており、イーベイはペイパルが上場することで多額のキャッシュを手に入れることができるため、喧嘩別れとは言え双方にメリットがある分社になります。

ペイパルとイーベイのように大きな企業ではなく、中小であっても理にかなえば分社することを検討される経営者の方は多いはずです。

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2)分社化の5つのメリットとは?

【1】節税対策が可能

税金に関しては、対象となる法人税や消費税など、いくつかのメリットがあります。例えば、「連結納税」を選べば、赤字企業と黒字企業の損益収支を相殺して納税額を軽減できることもあります。

分社化して事業を振り分けた場合は、課税売上が1,000万円未満の場合は消費税の支払いが不要となり、年間売り上げに対して8%の節税が可能になります。

また、交際費の非課税枠を使うことができるようになるため、損金算入限度額も従来は800万円までだったのが、分社化した会社それぞれで800万円までが許容範囲となり、合計1,600万円の損金算入が可能になります。

つまり、所得が800万円以下の低い法人税率を2社分適用することができるため、800万円×(38%-25%)=104万円が節税できるのです。

【2】後継者問題の解決策

経営者にとっては、「後継ぎ問題」は大きな悩みの一つと言えます。候補が複数人いる場合に、分社化してその権限を分散させることで、不要な争いを避けることができます。

また、権限移譲をする前段階においても、複数の候補者に分社化した経営者として権限を与え、それぞれで競わせることで会社全体の利益を上げていくことも将来的なメリットと考えられます。

さらに、そのことは経営を学ぶ大きなチャンスとなり、後継者を育成する場を作ることにもなります。その社員も、事業の採算性がはっきりしている状況においては経営が見えやすく、そのまた次の後継者として育成していくこともでき、人材育成についてはメリットが連鎖していきます。

【3】責任感が与えられ社員一丸に

分社化することによって、分社化された企業には責任感が与えられることで、結果を出すために社員一丸となって目標に突き進むことができるメリットがあります。

特に多種多様な事業を営む企業では、すべての事業が収益を上げられることは簡単ではなく、そのマイナスとなる事業が分社化された場合、収益を上げようと、今までにはない営業法やサービス、新たな取引先、仕入先などを真剣に考えるようになります。

また、分社化した企業が数社あれば、競争意識も芽生え、相互に相乗効果を得られることにもなります。

【4】細かなところにまで目が届くように

企業は規模が大きくなると、事業にも幅が広がり、担当する事業以外のことは触れないようにする傾向がありますが、分社化することで責任の所在が明らかとなり、様々な事業の成果を見られるようになるメリットがあります。

この数年で、日本の大企業では「データ改ざん」や「粉飾決算」など、一部の従業員しかわからない不正な工程を何年も続けてこられたのは、規模が大きくなりすぎ、細かいところにまで目が届かなくなったことが原因とされています。

勤務時間内だけ仕事をしていればいいという従業員と、創意工夫し事業の収益を上げようとする従業員が混在すれば、相互の意思も通じず、管理する側でもまとめきれなくなる可能性もあるため、分社化によって小型化することで意思の疎通を共有できるメリットがあります。

【5】企業の破綻リスクを分散

企業として分社化しない場合、売上高も安定し収益も出ていれば問題はありませんが、万が一、取引先の倒産や災害などの「事故」で企業の収益が悪化すれば、たとえ売上高が上がっている事業があっても、「事故」により収益が急落すれば企業全体が破綻に追い詰められることになります。

ただ、分社化することによって「事故」においても収益のある事業を残すことも可能で、分社化した企業がグループ企業であっても負債などを負う必要はありません。

これは100%出資の分社化した企業でも親会社の破綻で負債を負う義務は生じませんので、企業の財務保安のためにも企業の分社化は企業の破綻リスクを回避するメリットがあります。

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3)注意すべき分社化の4つのデメリットとは?

【1】分社化で企業が増え経費も倍に?

分社化するデメリットとして、単純に企業がもう一つ設立するため、事業所や光熱費、人件費、財務、税理士など固定費が2重になる可能性がデメリットとなります

また、同族企業の分社化では財務処理や税務調査は重要になってくるので、この管理工数が新たに発生してしまいます。そのため、このデメリットを軽減するためどう調整するか事前に確認する必要があります。

例えば、分社化しても事業所や財務、税理士などは共有することで必要最低限の経費で済ませることも可能となるため、どのような調整が可能なのか事前に確認することをおススメします。

【2】親会社の業績が悪化した場合の軋轢

本体企業と分社化した企業がともに業績が堅調で収益も上げられていれば相乗効果として「成功」と言えますが、本体企業の業績が悪くなった場合、分社化した企業から利益配当などで生き延びることも可能です。

ただ、この状況が長期間にわたることになると、同じグループの企業間同士でも間柄がうまくいかなくなるデメリットがあります。分社化した企業の給与が本体企業より低い場合には、その感情は大きくなるだけで感情的な部分が高まりデメリットしか生まれません。

そのため、企業が分社化する場合には、事業内容や給与体系、収益時の配当、業績悪化時の対応方法などを事前に決定し分社化することが必要となります。

【3】損益通算できるのは100%子会社のみ

分社化した企業が複数の事業および配当で収入を得ている場合、法人税の連結納税を選択することで赤字子会社と黒字子会社の損益通算を行って利益を圧縮し、節税対策を行うことが可能です。

ただしこれには前提条件があり、分社化が発展的な目的で行われており、尚且つ親会社が子会社の株式を100%持っていないと損益通算はできませんので、注意が必要となりますので注意してください。

【4】分社化した経営者が独自の方針も

分社化によって企業には経営者が生まれ、役員、従業員と新たな事業を行いますが、定期的な本体企業との連携を怠ってしまうと、分社化した経営者が独自の方針を立てたり、別会社となることを認識し、不正を起こしやすい環境になるのがデメリットとなります。

ただ、これらは企業間において稟議制度を取り入れ、支払い支出の承認制、管理レポートなど内部統制をしっかり決めれば大きな問題にはなりません。

分社化した企業の経営を誰に任せるのか、事業の責任者や財務担当など、登用の際には十分な検証が必要であり、一つの企業を任せるわけですので、迅速、的確な意思決定ができる人材選択が重要となります。

説明を受ける女性

4)分社化の手続きの流れ

【1】新設分割と吸収分割の違い

多様にあるM&A手法の一つに、「会社分割」があります。会社分割とは、組織再編行為に分類される手法の一つです。

会社分割は、「新設分割」と「吸収分割」の二つに大別できます。M&Aを検討する方の中には、両手法の違いを知っている方は意外と少ないかもしれません。

そこで、新設分割と吸収分割、それぞれの流れを説明していきます。

【2】会社分割

(1)M&A手法としての会社分割

事業に関して所有する権利や義務を、他の企業に受け継がせるM&A手法です。この手法は、株式会社だけでなく合同会社でも活用可能で、株式交換や合併と同様に、組織再編行為と呼ばれます。そのため、主に経営統合やグループ内再編を目的に活用されています。

会社分割の税務については、組織再編税制に基づいていますので、簡単に説明すると適格要件を満たせば、M&Aに伴う課税は発生しません。

(2)会社分割の種類

このM&A手法は、大きく分けて以下の2種類があります。

・新設分割

・吸収分割

この分割方法は、資産・契約をどこに譲渡するのか、その相手によって異なります。新設分割の場合は、資産・契約を新しく設立する会社に移転した場合の方法で、吸収分割とは、資産や契約を既存の他社に移転します場合の方法となります。

【3】新設分割の手続きの流れ

(1)計画作成

新設分割の場合は、分割会社にて『分割計画書』を作成しなければいけません。主な作成事項については、以下の通りです。

・新設会社の目的・商号・本店所在地・発行可能な株式の総数

・新設会社の定款で定める事項

・分割時の対価・設立会社の資本金・準備金

・設立会社へ移す資産・債務や権利義務にかかる事項

・分割型分割については、それにかかる一定の事項

(2)事前開示書類の備置

吸収分割の場合と同様、一定の事項について記した書面等を作成し、分割会社と新設会社それぞれの本店に備置する必要があります。

(3)債権者保護手続き

吸収分割の場合と同様、債権者に対して『官報による公告』と『個別での通知』を行う必要があり、債権者は「分割について異議を述べる権利」を保有しています。

(4)株主総会の特別決議

吸収分割の場合と同様、株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。

(5)登記申請

新設分割は、登記申請を完了することによって効力が発生します。したがって、効力発生日は登記申請を完了した日となります。

また、登記申請は、分割会社と新設会社が同時に行う必要があります。

(6)事後開示書類の備置

吸収分割の場合と同様、一定の事項について記した書面を作成し、分割会社と新設会社それぞれの本店に備置する必要があります。

【4】吸収分割の手続きの流れ

(1)契約締結

吸収分割の場合は、分割会社と承継会社の間で『吸収分割契約』を締結しなければなりません。主な締結事項は、以下の通りです。

・分割会社と承継会社それぞれの商号と住所

・会社分割の対象となる資産や権利

・対価についての事項

・効力発生日

・分割型分割の場合は、それに関する一定の事項

(2)事前開示書類の備置

分割会社と承継会社は、一定の事項について記した書面等を作成し、それぞれの本店に備置する必要があります。 備置期間は、「所定の備置開始日から効力発生日の後6ヶ月経過日」と定められており、主な記載事項については以下の通りです。

・契約内容

・対価の相当性についての事項

・計算書類等についての事項

・分割型分割の場合は、それに関する一定の事項

・効力発生日以降、承継会社の債務履行見込みについての事項

(3)債権者保護手続き

債権者保護手続きとは、会社分割後に債務履行が請求できない債権者に対して、『官報による公告』や『個別での催告』を行うことを指します。 債権者は、「会社分割について異議を述べる権利」を保有しています。

そのため、分社型分割のように会社分割後であっても分割会社に債務履行が請求できてしまうような場合を除き、会社分割では原則として、債権者保護手続きを行う必要があります。

主な通知内容は、以下の通りです。

・会社分割を行う旨

・会社分割を行う相手会社の商号・住所

・計算書類の要旨

・「債権者は一定期間であれば異議が述べられる」という旨

(4)株主総会の特別決議

会社分割の実行にあたっては、原則として、株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。

また、株主に対しては、効力発生日の20日前までに「会社分割を行う旨」について通知しなければならず、会社分割に反対する株主は、「株式買取請求権」の行使が認められています。

(5)登記申請

吸収分割の場合は、『契約の締結』の際に定めた期日が効力発生日となります。 『登記手続きは効力発生日より2週間以内に行うこと』と期限が定められているため、しっかり計画を立てて手続きを行う必要があります。

(6)事後開示書類の備置

分割会社と承継会社は、一定の事項について記した書面等を作成し、それぞれの本店に備置する必要があります。 備置期間は、『効力発生日から6ヶ月間』と定められており、主な記載事項については以下の通りです。

・効力発生日

・債権者保護手続き、株式買取請求手続きなどの経過

・移転先分割会社の重要な権利義務にかかる事項

・変更登記を行った日

・会社分割に関する重要な事項






まとめ

・分社化とは、部門を会社本体から切り分け、独立子会社として新たな会社を設立することである。

・分社化の目的は、主に①独立した権限を与えることで営業活動を行いやすくすること、②合併などにより企業文化が合わず衝突のリスクを回避すること、③コスト削減や節税対策を実現ことの3つとなる。

・分社化には主に5つのメリットがあり経営上メリットは大きいが、4つの注意すべきデメリットもある。

・分社化には大きく分けて、資産・契約を譲渡する相手により、新設分割と吸収分割の2種類に分かれる。

・新設分割と吸収分割の手順は共通していることが多いが、新設分割の場合、『分割計画書』を作成する必要があるなど異なる点もある。

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他