中小企業が実践したい節税テクニックの新常識

中小企業が経営を行っていくうえで、税金は重くのしかかります。なのに、税金に関してはさっぱりという人が多い気がします。税金の知識が無いと、余計に税金を支払うことにもなり、非常にもったいないです。そこで今回は、経営する上でかかる税金で、比重が重い法人税について、お得な節税方法と合わせて解説していきます。






1)中小企業とは

中小企業庁によると、中小企業の定義は、(業種によってことなりますが)主に資本金と従業員数によって判断されます。また中小企業よりも小規模な企業として、小規模企業者という分類もあります。

【1】業種別に見た中小企業の基準

業種 中小企業者 小規模企業者
資本金の額 従業員数 従業員数
製造、建設など 3億円以下 300人以下 20人以下
卸売 1億円以下 100人以下 5人以下
サービス 5,000万円以下 100人以下 5人以下
小売 5,000万円以下 50人以下 5人以下

(中小企業庁HPを参考に作成)

後ほど説明する法人税では資本金1億円以下の中小企業には軽減税率があるので、今回はこの基準を中小企業の定義として話を進めていきます。中小企業は我が国の企業の99.7%を占め、常時雇用者の69.4%が働くなど、我が国経済において中心的な役割を果たしています。

つまり、中小企業は地域の経済と雇用を支えている、重要な存在であるといえます。重要な存在であるがゆえに、中小企業には税制上の優遇措置がいくつもあります。

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2)中小企業にかかる税金

会社(法人)にかかる税金で、一番比重が重いものは法人税です。なぜなら法人税と付く税金は3つあるからです。

・法人税

・法人住民税

・法人事業税

これは3つとも別々に課される、会社にとって支払わなくてはいけない税金です。また別の言い方で「法人3税」と言われることもあります。これから先では、会社を経営する上でかかる税金で最も重要ともいえる「法人3税」について解説していきます。

【1】法人税

法人税は、企業の営業活動によって得られる所得(売上から原価などを引いた所得)に対してかかる税金です。これは、所得に対してかかるので、個人に対してかかる所得税をイメージするとわかりやすいかもしれません。ただ、所得税と法人税では課税方式が大きく異なります。

<課税方式>

・所得税→累進課税方式

・法人税→比例課税方式

とそれぞれ課税の方式が異なります。

累進課税は、所得に応じて段階的に税率が上がっていきますが、法人税は基本的には税率が一律です。ただ、中小企業については、一部軽減税率が適用されるます。これについては次で詳しく解説していきます。

<法人税の税率>

法人税の税率は原則として23.2%です。ただし、中小法人は、平成24年4月1日から平成31年3月31日までに開始する各事業年度分の年800万円以下の所得金額の部分については、税率が15%に軽減されています(本則:19%)。(中小企業税制 平成30年度版より)

<法人税の税率>

区分 所得 税率
中小企業(資本金1億円以下) 年800万円以下の部分 15%
年800万円超の部分 23.2%
中小企業以外の法人 全額 23.2%

ここでいう、中小企業の基準は、資本金が1億円以下のというものです。このように、中小企業は年800万円以下の所得に関しては、法人税が本則の19%ではなく、15%となっており、かなり優遇措置を受けていると言えますね。

ここで注意していただきたいのが、年間で800万円以下の所得に対しては税率が15%で、800万円を超えた部分に関しては、23.2%の税率が課されますので、間違えないようにしてください。また、当事業年度にて赤字が出た場合には、次の事業年度にて赤字の繰越ができるという節税方法があります。これについては、のちほど解説していきます。

【2】法人住民税

法人住民税には、

・市町村に払う「市町村民税」

・都道府県に払う「道府県民税」

の2種類があります。

<所得割と均等割>

さらに、税率と税額の計算方法も2種類あります。

・「所得割」

前年度の所得に対して課税される。法人税額×税率で算出※所得が赤字で法人税額が0円の場合は、課税されません。

・「均等割」

定額で定められており、所得に関係なく支払わなければいけない。さらに言うと、法人の規模(資本金等の額、従業員数)や、事業所所在地によって異なります※所得が赤字でも支払わなければいけません。所得割の税率と均等割の税額は、市町村や都道府県ごとに決められています。詳しくは各市町村、都道府県のHPで確認することができます。

【3】法人事業税

<法人事業税の税率>

法人の種類 所得の区分 平成28年4月1日から平成31年9月30日までに開始する事業年度
課税標準 超過税率1
普通法人、公益法人等 年400万円以下の所得 3.4% 3.65%
年400万円を超え、年800万円以下の所得 5.1% 5.465%
年800万円を超える所得 6.7% 7.18%

(東京都主税局HPを参考に作成)

法人事業税は、課税標準額(所得等)×税率で算出されます。上の図のように、所得の額に応じて、適用になる税率が変わります。さらに、事業を開始する事業年度によっても適用される税率が変わります。

※1 東京都では超過課税(超過税率を適用)を実施していますが、あわせて、資本金の額又は出資金の額が1億円以下で、かつ、年所得が2,500万円(年収入金額が2億円)以下の普通法人(収入金額課税法人)又は年所得が2,500万円以下の特別法人等に対しては、標準税率で課税する不均一課税を行っています。(東京都主税局HP より)

オフィスビル

3)2つの節税対策~中小企業において~

先程まで、法人3税についての概要や税率について解説してきましたは、ここからは中小企業に適用される節税方法について解説していきます。

【1】欠損金の繰越控除

青色申告書を提出した事業年度において欠損金(税務上の赤字)が生じた場合には、その事業年度の後の事業年度以降に繰り越して、後の事業年度の所得から欠損金を控除することで、法人税の負担を軽減できます。(中小企業税制 平成30年度版より)

このように当年度に赤字が出た場合に、翌年度以降の所得からこの分の赤字を控除することができるということです。それによって、法人税を節税することができます。中小企業においてはさらに優遇措置があります。

中小企業税制 平成30年度版によると、「中小法人では、発生した欠損金を、欠損金が発生した事業年度の次の事業年度以後10年間控除することができます」とあり、中小企業に関しては、赤字を10年間繰り越すことが可能になります。

【2】経営セーフティ共済

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。(中小企業庁HP より)

主に4つのメリットがあり、節税対策としても効果が高いです。

・無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れできる

・取引先が倒産後、すぐに借入れできる

・解約手当金が受けとれる

<節税効果のあるメリット>

・掛金の税制優遇で高い節税効果

掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できるので、節税効果があります。元々は、取引先の倒産などの不測の事態に連鎖的に倒産することを防ぐためにできた制度なのですが、掛金を必要経費に算入できるため、節税効果も高いです。

経営状態の悪化に備えながら節税もできるなんて、まさに一石二鳥ですね。

頭を抱えて悩む男性

4)中小企業の節税に関するQ&A

【Q1】経営セーフティ共済での借り入れの返済期間はどのくらい?

まず全ての借り入れにおいて、6か月間の返済猶予期間が設けられています。返済期間は借入額に応じて異なり、以下のようになっています。

借入額 返済期間(猶予期間含む)
5,000万円未満 5年
5,000万円以上6,500万円未満 6年
6,500万円以上 7年

【Q2】法人税が課税されない法人もあるの?

中には課税されない法人もあります。一般的に、株式会社や有限会社などは普通法人と呼ばれます。今回の説明の中では主にこの普通法人について話を進めてきました。でも他にも法人の種類はいくつかあるので紹介していきます。

<法人税が課される法人>

・普通法人

・協同組合(軽減税率あり)

<法人税が課されない法人>

・人格のない社団(PTAなど)

・公益法人(学校法人や宗教法人など)

・公共法人(NHKや地方公共団体など)

※上の2つに関しては、基本的には法人税はかからないですが、営利目的で収益事業を行った場合には法人税が課されます。






まとめ

中小企業と一般的に言っても定義が曖昧だったりします。税金の種類や軽減税率を適用するには、それぞれの中小企業の条件に当てはまっている必要があります。この定義に関しても知っているか知っていないかで、節税が受けれなくなってしまいます。これでは非常にもったいないです。繰り返しになりますが、受けれる節税をしっかり受けるために今のうちに最低限の知識を付けておきましょう。

<参考文献>

【中小企業庁HP】http://www.chusho.meti.go.jp/index.html

【法人税・法人住民税・法人事業税の違いをわかりやすく解説】https://keiei.freee.co.jp/2015/06/10/houjin_jigyou_jyumin/

【東京都主税局HP】http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/houjinji.html#ho_02_02

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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ABOUTこの記事をかいた人

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他