不動産の贈与税をきちんと節税するノウハウ【税理士監修】

贈与税はそのままの税率を適用すると相続税よりも税率が高いため、そのままでは生前贈与による節税メリットはありませんが、各種の控除や特例を活用することによって様々な節税効果を発揮することができます。そこで生前贈与による節税効果をはじめ、さまざまな相続メリットについて詳しく説明します。






1)生前贈与にはどんな種類がある?

【1】生前贈与

生前贈与とは、被相続人(相続される人=財産を残す人)の生前に被相続人の財産を贈与することで、生前贈与の相手は、配偶者や子供でも構いませんし、まったく血縁関係のない人に贈与することもできます。また、贈与の対象物は、預貯金、不動産、有価証券など、あらゆるものが該当します。生前贈与には以下の3つに分類することができます。

①単純贈与

②条件付贈与・期限付贈与

③負担付贈与

【2】単純贈与

単純贈与とは、単純に、贈与者から受贈者(贈与を受ける人)に、財産を無償で与えるというもので、贈与のための条件や、受贈者の負担を設定しない贈与を単純贈与と言われます。

【3】条件付贈与・期限付贈与

条件付贈与とは、贈与の効果を生じされるための条件を付けた贈与のことです。例えば、結婚して子供が生まれたらマンションを贈与するといったケースです。期限付贈与とは、贈与の効果が生じる期日を定めた贈与のことです。例えば、2025年1月1日になったらマンションを贈与するといったケースです。

【4】負担付贈与

負担付贈与とは、受贈者が一定の債務などを負担することを条件にして行う贈与のことです。例えば、住宅ローンの残金を受贈者が返済することを条件に住宅を贈与するケースや、受贈者が贈与者の介護を行うことを条件に財産を贈与するケースなどがあります。

2)生前贈与の成立要件とは?

【1】生前贈与の成立時期

贈与契約は、自分の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方がこれを受諾することによって成立します。そのため書面は不要となりますが、書面にしておくと撤回ができなくなるので受贈者にとって安心でき、税務調査の際に贈与があったことの証拠にもなります。

【2】書面契約による有効性

贈与は節税策として有効なケースがあり、実際は贈与していないのに、後付けで贈与していたことにして、税金逃れをしようとする人もいます。そのため税務調査では、税金逃れを見逃さないように細かな調査が行われます。その場合、贈与契約書を証拠として提示することで、贈与があったことを証明しやすくなります。

【3】生前贈与は撤回

贈与を撤回できるかどうかは、その贈与が、書面による贈与なのか、書面によらない贈与なのかによって異なります。ここでいう書面とは、形式的にも正式な贈与契約書のようなしっかりしたものでなくても、贈与の事実が見て取れる程度のものでも構いません。

書面による贈与にすることで、原則として撤回することができなくなります。一方、書面によらない贈与は、履行の終わった部分でない限り、撤回することができるので注意してください。履行とは、現物の引き渡しや移転登記のことになるため、直接財産を渡していなければ、書面によらない贈与は撤回することができます。

ただし、書面による贈与でも受贈者に著しい忘恩行為(恩を忘れる行為)があった場合は、撤回できる可能性があります。

計算機

3)生前贈与にかかる税金とその計算方法とは?

【1】贈与税

贈与税とは、贈与が行われた場合にかかる税金のことを指します。具体的に言うと、贈与者が受贈者に財産をあげた場合、贈与者が受け取った財産に対して課せられる国税のことを言います。つまり、個人から金品などの財産をもらったときにかかる税金ということになります。

この贈与税というのは、相続税を回避することを防ぐためにあると言われています。もしもこの贈与税がないのであれば、将来相続税を払わないで済むように、生前に贈与をすることで税金対策が行われます。そのため、生前の贈与に対しても税金がかかるように補完しています。このような理由から贈与税は、基礎控除の金額については相続税より低く、そして相続税の税率よりも高く設定されています。

【2】贈与税の計算方法

贈与税の計算は、贈与額から基礎控除額を控除し(差し引き)、贈与税率を乗じて(掛けて)、控除額を控除して(差し引いて)計算します。

贈与税=(贈与額―基礎控除額)×贈与税率-控除額

贈与税の税率は、一般贈与財産と特例贈与財産とで異なり、特例贈与財産の方が税率が低く設定されています。

【3】一般贈与財産

一般贈与財産とは、特例贈与財産に該当しない財産のことで、例えば、次の間柄の贈与に使用します。

夫婦、兄弟、子が未成年者の親子が対象となります。

一般贈与財産の税率は「基礎控除後の課税価格×税率-控除額」で計算できます。

【4】特例贈与財産

一方、特例贈与財産とは、直系尊属(親や祖父母等)から、贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の直系卑属(子や孫等)への贈与財産のことです。なお、配偶者の直系尊属からの贈与には適用できません。

一般贈与財産と同様に「基礎控除後の課税価格×税率-控除額」で計算できます。

具体的な数字は国税庁などのホームページでご確認ください。200万円であれば一般贈与財産と同じ税率となりますが、300万円以上の場合は、特定贈与財産の方が、税率が低くなっています。

【5】基礎控除

贈与税には毎年110万円の基礎控除が設定されています。贈与税の納税義務者は、贈与者ではなく、受贈者です。そのため、基礎控除額の算定も、贈与者ごとではなく受贈者ごとに行います。

例えば、ある年に、父と母から、それぞれ110万円ずつ贈与を受けたとすると、その年の受贈金額は220万円となります。基礎控除額を110万円超えてしまうので、その超えた分の110万円に対しては贈与税が課税されます。

【6】基礎控除の注意点

この基礎控除を毎年利用すれば、非課税で110万円×年数分の贈与が受けられることになります。ただし、毎年110万円ずつ贈与しても、実態として1つの贈与であれば、毎年の基礎控除を適用することはできません。

例えば、毎年110万円ずつ、20年間にわたって贈与を行えば、110万円×20年=2200万円を非課税で贈与できるように思われます。

しかし、20年にわたって110万円ずつ贈与することが初めから約束されているような場合は、その約束した年にまとめて、(2200万円-110万円)×50%-250万円=795万円の贈与税が課税される可能性がありますので注意してください。(例:一般贈与財産)

【7】不動産の計算方法

土地や戸建、マンションなどの不動産を売却した時に発生するお金と不動産を贈与財産とした場合に発生するお金は、金額が大きく異なります。

贈与税評価額とは、単純に売却するときの市場価格とは違い、贈与税を計算するために、その不動産がいくらなのかを計算した価格のことを指すからです。不動産の贈与税の計算方法は、不動産の相続税の計算方法と同じで、相続税評価額で計算することになります。

一戸建てやマンションなどの不動産の場合は、計算方法が土地と建物で違うため、それぞれで計算します。土地の贈与税の計算方法は「土地の1㎡当たりの価格(路線価)×土地の広さ」で計算します。

土地については「路線価額(ろせんかがく)」により求められます。ちなみに路線価額の定められていない地域においては、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて求めることになります。

住宅に関して話し合う男女

4)知っておくべき生前贈与のメリットとは?

【1】メリットの種類

生前贈与のメリットとして、次の点が挙げられます。

①住宅取得等資金の贈与の特例を利用できる

②2000万円の贈与税の配偶者控除を利用できる

③収益物件の場合、節税になる

④相続時精算課税を選択できる

⑤いつ、誰に、どの財産を、どれだけ贈与するか自由に簡単に決められる

⑥相続トラブルを避けられる

以下、それぞれについて説明します。

【2】住宅取得等資金の贈与の非課税の特例

2015年から2021年の間に、直系尊属(親や祖父母等)から、自宅の新築、取得または増改築等のための資金の贈与を受けた場合において、一定の要件を満たすときは、住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を利用することができます。

この特例を利用すると、限度額までの金額が贈与額から控除され非課税となります。その非課税額は、住宅用家屋の取得に係る契約日、省エネ等住宅、その他の住宅で異なりますので、具体的な控除額を説明します。契約日が「現在~2020年3月31日まで」は、省エネ等住宅が 3,000万円、その他住宅が2,500万円となり、この控除額は毎年段階的に減額されます。

「2020年4月1日~2021年3月31日」は、省エネ等住宅が1,500万円、その他住宅が 1,000万円。「2021年4月1日~2021年12月31日」は、省エネ等住宅が1,200万円、その他住宅が700万円となります。ただし、この控除額は2019年10月以降の消費増税後の額となりますので、2019年10月までに購入した場合は、省エネ等住宅1,200万円、その他住宅が700万円となりますので、注意してください。

また、省エネ等住宅というのは、省エネ等基準に適合することを証明された住宅のことですが、要件を満たすためには耐震要件などさまざまな要件を満たす必要があるため、建てる時点で住宅メーカーに相談することをおススメします。

自宅を相続により取得する時には、小規模宅地等の特例という一定の要件を満たせば、土地の評価額を最大8割軽減する制度があります。しかし、この住宅取得等資金贈与の特例を利用して持ち家を所有してしまうと、小規模宅地等の特例が受けられなくなってしまうため、将来自宅を継いでもらう予定の子らへの住宅取得等資金贈与をする時には注意が必要です。

【3】2000万円の贈与税の配偶者控除

贈与税の配偶者控除とは、結婚20年以上の夫婦が、配偶者に自宅または自宅購入用資金を、2000万円を上限として、非課税で贈与することができる制度です。控除を受けるためには、次の3つの要件のすべてを満たしていなければなりません。

①婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと

②自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること

③贈与を受けた年の翌年3月15日までに、受贈者がその住宅に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

配偶者は、相続の場合も大きな控除枠があり、相続税がかかることはあまりないので、この贈与の特例は利用しない方が得なことが多いです。

【4】収益物件の節税

投資用マンション等の収益物件の場合、生前贈与で早めに次の世代に引き継ぐことによって、収益分が節税になる場合があります。例えば、1年に500万円の収益を生む1億円の不動産を、亡くなる10年前に相続時精算課税制度を利用して生前贈与したとします。そうすると、この物件は単純計算で10年間で5000万円の収益を生みます。

仮に生前贈与せずに、10年後に相続した場合はどうでしょうか。不動産の価値は10年間で変化しなかったと仮定すると、不動産価格1億円に、不動産収益の5000万円が加わり、合計1億5000万円に対して相続税が課税されます。

これに対し、相続時精算課税制度を利用した場合は、贈与時に取得した不動産の時価1億円に対して相続税が課税されます。マンション贈与時に一旦贈与税を納めていますが、この金額は、相続税の前払いとして実際の相続税から控除されますので、相続時精算課税制度を利用した方が、課税される金額が5000万円低くなります。ただし、相続時に不動産の時価が5000万円になっていたとしても、相続税は贈与時の時価1億円に対して課税される点に注意が必要です。

【5】相続時精算課税を選択できる

生前贈与で早期に財産を引き継げるのは良いとしても、贈与税がかかることによって財産が目減りしてしまいます。その場合は、相続時精算課税を選択することによって、贈与税が非課税になり、代わりに相続時に相続税として課税されることになります。

贈与税の基礎控除は年間110万円ですが、相続税の基礎控除は最低でも3600万円と大きいので、ほかの相続財産と合算しても基礎控除以下に納まれば、相続税すらも課税されません。ただし、遺産の金額が相続税の基礎控除を超えるような多額の場合には、むしろ贈与税の方が税率が低いという側面もありますので、相続時選択課税制度を選択した方がよいかの判断については、相続に精通した税理士に相談することをおススメします。

【6】贈与の場合、自由度が高い

通常の相続の場合は、被相続人の死亡時に、法定相続人が法定相続分を相続されます。つまり、相続の場合は、財産移転のタイミングも、財産の移転先も、配分も、分割内容も指定することはできません。この点、生前贈与であれば、いつ、誰に、どの財産を、どれだけ贈与するか自由に決めることができます。

遺贈や死因贈与でも、誰にどの財産をどれだけ引き継ぐか決めることができますが、タイミングは被相続人の死後に限定されます。また、遺贈の場合は、遺言の形式が厳格に決められており、形式不備があると遺言が無効になってしまうというリスクもあるからです。

【7】相続トラブルを避けられる

贈与者と受贈者が話し合って贈与の内容を決めることができるため、相続のように相続人だけで遺産分割協議をするよりもトラブルは生じにくいでしょう。また、遺贈のように、遺言書の内容が明らかになってびっくりということも避けられます。

指差すビジネスウーマン

5)注意すべき4つのポイントを紹介

【1】ポイント1:基礎控除額の活用について

前述のように、毎年贈与していても一つの財産としてまとめて税金が掛けられるなどのリスクもあります。そのため、毎年の基礎控除額110万円を上手に活用するためにはどのように対策すればよいか説明します。

例えば、毎年入金する日を変更するとか、金額を変更するとか、たまには基礎控除の枠を超えて贈与して贈与税を申告するとか、毎年契約書を作成するとか、毎年贈与式を行い写真を残すとか、様々な対策の必要性がネット上でよく言われています。

しかし、このような対策は実際は不要となります。実態として別の贈与であれば、問題ないからです。問題となるのは、贈与者が受贈者名義の口座を管理しているようなケースとなります。税務上は、贈与者が口座を管理している場合は、毎年110万円ずつ入金していても、毎年の贈与が成立しているとは認められず、受贈者に通帳と届印を渡して、管理を任せた時点で、贈与が行われたと認定され、その年にまとめて課税されるリスクがあります。

特に、後付けの贈与による税金逃れを許さないために、実際に贈与があったかどうかは厳しくチェックされます。そのため、必ず贈与の実態を立証できるということを保証するものではありませんが、対策を以下の3点にまとめました。

① 贈者名義で受贈者自身が開設した口座に振り込む

②通帳、届印、キャッシュカードは受贈者が管理する

③贈与契約書を作成する

以上の点をしっかり対策することでリスクは回避できる可能性が高くなります。

【2】ポイント2:生前贈与と遺留分

遺留分とは、被相続人の配偶者や子など一定の範囲の相続人に留保された相続財産の割合のことです。相続人となる人や各相続人の相続分については民法に定められていますが、これは遺言によって変更することができますし、生前贈与や死因贈与によって相続財産が減ってしまったり無くなってしまいます。

そのような場合に、被相続人と近しい関係の本来の相続人が、まったく遺産を取得できなくならないように、民法では、一定の範囲の相続人に対して、法定相続分の一定割合を遺留分として相続できるようにしているのです。そのため、財産の多くの割合を不均衡な生前贈与に当てた場合、法定相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。

遺留分を侵害すると、贈与者が亡くなった後に、遺留分の侵害を受けた法定相続人から受贈者に対して遺留分減殺請求(遺留分を取り戻すための請求)が行われる可能性があります。そのため、生前贈与を行う際は、トラブルを避けるためにも遺留分を侵害しない程度の割合にとどめておくことをおススメします。

もっとも、遺留分は放棄することもできるので、相続人が遺留分の放棄に応じるのであれば、生前に遺留分の放棄の手続きを取っておく手もあります。

【3】ポイント3:生前贈与と持ち戻し

持ち戻しとは、一部の相続人が相続開始前に生前贈与などによって財産をもらっていた場合、他の相続人と比べて得をしていることになるので、不公平にならないように、相続分から贈与を受けた分を差し引くことです。

一部の相続人に生前贈与を行った趣旨が、早めに財産を引き継ぐということであれば、相続時に持ち戻しが生じても問題ないでしょうが、一部の相続人により多くの財産を残すという趣旨であれば、持ち戻しが生じると意味がなくなってしまいます。そのため、そのような場合は、持ち戻しをしないように遺言を残しておくことをおススメします。

【4】ポイント4:不動産購入直後の贈与

不動産贈与の場合は、現金を贈与するより節税対策になる場合が多いです。その理由としては不動産贈与の場合は実際の価格ではなく、相続税評価額で決まるためです。現金の場合は当然ですが、贈与した現金そのままの額に対して贈与税がかかるため、不動産の場合は実際の7~8割程度の額にしか贈与税がかからないことになります。

そのため、現金ではなく不動産で贈与することにより、大幅に節税できるのです。しかしここで注意すべき点としては、不動産を購入した直後に、すぐに贈与する場合です。この場合、明らかに節税対策とわかってしまうため無効になり、不動産を購入した価格全額に対して贈与税がかかるときがあるので注意してください。






まとめ

・生前贈与の契約は書面でなくても可能ではあるが、撤回されるなどのトラブルを考慮して書面で行うとよい。

・贈与税は毎年110万円の基礎控除があり、相続対策にもなるが、同じ財産や計画的な贈与の場合は認められない場合もあるので注意が必要である。

・収益性のある不動産を相続する場合は、相続時よりも生前贈与の方が節税効果が高い場合が多いので比較検討するとよい。

・生前贈与によるメリットは大きく、税金の節税効果だけでなく、財産分与などの親族間のトラブルを回避の対策にもなる。

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他