【税理士監修】住宅にかかる贈与税を賢く節税する3つの知識

親や祖父母から贈与を受けて住宅を取得する時は、住宅取得資金の贈与の非課税枠を利用することが得策です。贈与制度の基本事項から、非課税枠を超過する場合の有利な贈与方法など、住宅の贈与について賢く節税する3つの知識とその方法をお伝え致します!






1)いくらまで無税で貰えるの?まずは住宅取得資金の贈与制度を知ろう!

一定の要件を満たせば、住宅取得のために贈与された資金について贈与税が非課税となる制度です。非課税となる金額については上限があり、住宅の購入や新築工事に係る契約日や取得する建物の種類などにより金額が異なります。

【1】誰から誰への贈与が対象か?

父母や祖父母などから子や孫への贈与が対象となります。直系での贈与のみが対象となりますので、例えば配偶者の親から贈与を受けた場合には、直系ではありませんので非課税制度は利用できません。(ただし配偶者の親と養子縁組をしている場合には直系であるため利用可能です。)

【2】対象となる贈与の期間は?

平成27年1月1日から平成33年(2021)年12月31日までの間の贈与が対象です。

現在の贈与税の非課税制度については、上記の通り期間が定まっています。なお2022年以降については制度の延長や改正が行われる可能性はあります。

【3】非課税となる金額の上限額は?

新築等をする建物の種類ごと、新築や売買の契約日により次のような金額となります。

(1)消費税の税率が8%である場合(契約締結日時点)

新築や売買の契約日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
~2016年12月31日 1,500万円 1,000万円
2016年4月1日~2020年3月31日 1,200万円 700万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,000万円 500万円
2021年4月1日~2021年12月31日 800万円 300万円

(2)消費税の税率が10%である場合(契約締結日時点)

新築や売買の契約日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
2019年4月1日~2020年3月31日 3,000万円 2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,500万円 1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日 1,200万円 700万円

省エネ等住宅に該当するかどうかは、判断が難しいので建築会社などに確認をすればすぐ教えてもらえるはずです。また消費税については2019年10月に10%となる予定になっています。

営業マンと高齢者

2)誰でも非課税制度を利用できるの?贈与を受ける人(受贈者)の要件をチェック!

せっかくの贈与でも、受贈者が要件を満たしていなければ普通に贈与税を支払わなければなりません。必ず事前にチェックをしましょう!

【1】直系尊属(父母、祖父母等)からの贈与であること

【2】20歳以上であること(贈与を受けた年の1月1日時点で判断しますので要チェックです!)

【3】合計所得金額が2,000万円以下であること(高給取りの人は利用できません!)

【4】平成21年分から平成26年分の贈与で「住宅取得資金の非課税制度」を利用していないこと

【5】配偶者や親族など身近な人から住宅を購入したものではないこと

【6】配偶者や親族など身近な人との間で、新築もしくは増改築等の請負契約をしたものではないこと

【7】贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与された資金の全額を支払いに充てていること

【8】日本国内に居住していること(例外あり)

【9】贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住すること(3月16日以降の居住となる場合には、遅滞なく居住することが確実であると見込まれること)

3)賢く節税する3つの知識

とてもメリットのある住宅取得資金の贈与制度ですが、親などから贈与してもらう金額が上記の非課税枠を超えることも多いと思います。非課税枠を超過して贈与を受ける方のほとんどが、どのような方法では貰うべきか、そのベストな方法が分からずに悩んでしまいます。

今回は、贈与金額に応じて賢く節税する3つの知識とその方法をお伝えします。

まずはポイントとなる3つの知識について概要をお伝えします。この知識を上手に利用して賢く節税を図りましょう!

【1】ポイントとなる3つの知識

(1)贈与税の暦年課税制度

計算期間 1月1日から12月31日

の間の贈与金額を合計

基礎控除額 年間110万円 受贈者(もらった人)1人あたりです!

年間110万円超贈与を受けた場合には、贈与税の申告と納税が必要となります。

税率 10%~55% 金額が多くなる程に税金の負担が増える仕組みとなっています。
利用のポイント 毎年110万円の基礎控除を利用しながら、長期間、低額の贈与を継続することで、税負担の少ない贈与が行えます。

(2)贈与税の相続時精算課税制度

計算期間 (1)と同様
特別控除額 累計2,500万円 この控除は暦年課税と違い贈与者毎となります。例えば父と母から2,500万円ずつ、合計5,000万円の贈与を受けた場合には、それぞれの特別控除2,500万円以内ですので、贈与税の負担はありません。但し、贈与税の申告は必須です。
税率 一律20% 特別控除額2,500万円を超えた部分が対象
贈与者 60歳以上の父母、祖父母 1月1日時点の年齢(受贈者も同様)
受贈者 20歳以上の子や孫等 2022年4月以降は18歳に引き下げ予定
暦年課税

の選択

相続時精算課税から暦年課税へは戻れません。 例えば「父」からの贈与について相続時精算課税を選択した場合には、今後の「父」からの贈与に限っては、全て相続時精算課税として取り扱われます。
相続時の扱い 贈与者が死亡した時に、贈与財産は相続税の対象 支払い済みの贈与税額については相続税に充当されます。もし計算された相続税よりも支払済みの贈与税額の方が多い場合には還付されます。
利用のポイント 特別控除額が2,500万円と大きいため、高額な財産の贈与時に利用される制度ですが、将来必ず相続税の対象となります。

(3)相続税

今回はどのような人が相続税の対象となるのかについてお伝えします。将来相続税が掛かるか、掛からないかがポイントとなります。

相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×法定相続人の人数(養子は人数制限があります)

相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円

遺産の純資産額(相続税が課税される財産から債務と葬式費用を控除した金額)が、基礎控除を超える場合には、相続税の申告と納税が必要となります。相続税が課税される財産の詳細については、今回は割愛します。様々な減額特例や死亡保険金の非課税枠などもありますので、詳細は税理士に相談を頂いた方が良いかと思います。

不動産イメージ

4)3つの知識を活用した住宅の賢い贈与の方法

【1】贈与方法のシミュレーション

(1)住宅取得資金の贈与金額が非課税枠内の場合

この場合には、特に悩むことはなく住宅取得資金の贈与の非課税枠を利用して贈与してください。贈与税も掛かりませんし、将来の相続税にも影響はありません。

シミュレーション例
A贈与金額 B住宅取得資金の贈与の非課税枠 C贈与税の

基礎控除

贈与税課税額

A-B-C

贈与税
1,300万円 仮 1,200万円 110万円 0万円 0円

(2)住宅取得資金の贈与金額が非課税枠を超える場合

・ケース1 贈与者が死亡した時に相続税が発生しない場合の贈与の方法

この場合には、住宅取得資金の贈与の非課税枠利用+相続時精算課税制度を利用してください。

住宅取得資金の贈与の非課税枠+相続時精算課税の特別控除2,500万円までの金額であれば贈与税は掛かりません。(もしこの金額を超える場合には20%の贈与税を納税しますが、将来相続が発生した際に相続税の申告をすることで、納税済みの贈与税について還付を受けることができます。)

シミュレーション例
A贈与金額 B住宅取得資金の贈与の非課税枠 C相続時精算課税の

特別控除

贈与税課税額

A-B-C

贈与税
3,000万円 仮 1,200万円 2,500万円 0万円 0円

・ケース2 贈与者が死亡した時に相続税が掛かる場合の贈与の方法

例として、父から子への贈与金額を3,500万円、住宅取得資金の贈与の非課税枠が1,200万円であるケースについて比較検討してみます。

①暦年課税により贈与税を支払う場合

シミュレーション例
A贈与金額 B住宅取得資金の贈与の非課税枠 C贈与税の

基礎控除

贈与税課税額

A-B-C

贈与税
3,500万円 仮 1,200万円 110万円 2,190万円 671万円

贈与税の負担が大きすぎますので、この方法は選択できません。(但し贈与課税金額が小さい場合には、利用する場合もあります)

続いて相続時精算課税を利用した場合にはどうなるでしょう?

②相続時精算課税により贈与税を支払う方法

A贈与金額 B住宅取得資金の贈与の非課税枠 C相続時精算課税の

特別控除

贈与税課税額

A-B-C

贈与税 将来相続税

の対象となる

金額A-B

3,500万円 仮 1,200万円 2,500万円 0万円 0万円 2,300万円

贈与税は発生しなくなりました。これで問題なし!という感じがしますが、将来相続税が課税されます。

相続税の対象となる金額は、A-B=2,300万円です。贈与者の相続時に例えどんなに建物が古くなっていたとしても、2,300万円は「みなし相続財産」として相続財産に加えられ、相続税が計算されてしまいます。相続税の税率は10%~55%であるため、相続税が発生する場合には少なくとも230万円以上の負担となります。そこで将来の相続税の節税まで踏まえた贈与を検討します。

③住宅取得資金の贈与と銀行借入金を利用して住宅を取得、銀行への返済資金を贈与する方法

・住宅を取得する年

建物代金 A贈与金額 贈与税 B銀行借入 対策
3,500万円

A+B

1,310万円 0万円 2,190万円 翌年から10年に

分けて贈与により支援

・翌年以降10年間合計

毎年の贈与金額 毎年の贈与税 贈与税

10年間合計

将来相続税の対象

となる金額

219万円

=2,190万円÷10年

10.9万円 109万円 0万円 ※1

贈与税が発生していますが、将来の相続税は回避できます。なおこのケースでは住宅の名義は全て「子」となります。

この場合には、銀行借入金について住宅ローン控除が適用可能です。銀行利息が負担となりますが、住宅ローン控除により所得税の節税効果もありますので、負担は小さいものと考えられます。なお住宅ローン控除についても適用要件がありますのでチェックが必要です。)

※1暦年課税で贈与した財産のうち、相続発生前3年以内に「相続により財産を取得する人」に贈与した財産については、相続税の対象となります。なお相続税の対象となる贈与について、支払った贈与税がある場合には相続税から控除されます。

④父と子が共有で住宅を取得し、住宅を相続する方法

建物代金 子名義

(資金は贈与)

贈与税 父名義
3,500万円

A+B

1,320万円 0万円 2,190万円 将来は相続税の対象

一般的には、父が2,190万円で取得した住宅の相続税評価額は取得金額2,190万円を大きく下回ります。土地は上昇する場合もありますが、建物は年々価値が減少していきます。子、父が取得する土地、建物の割合を調整することで更に節税が図ることも可能です。

なおこの場合には、住宅の名義は「子」と「父」の共有名義となります。遺産分割で他の相続人ともめることがない様に、「遺言」や「死因贈与契約」等の備えが必要です。

ファイル メモする男性

5)贈与税の申告のしかた

【1】申告の時期

贈与を受けた翌年の2月15日~3月15日の間に申告が必要です。非課税額を超えており贈与税を納税する必要がある場合の納税期限も3月15日迄となります。なお申告する人は受贈者です。例え税額が0円でも申告が必要となりますので注意しましょう。

【2】提出する書類

(1)贈与税の申告書

税理士に依頼することが最も間違いがないと思いますが、税理士報酬が必要です。自分でやってみようという方は、税務署の相談窓口に行くことも方法の一つです。ただし待ち時間が長い場合も想定されますので、時間には余裕をもって臨んでください。

並ぶのは嫌だという方は国税庁のwebサイトにある「確定申告書等作成コーナー」より申告書の作成が可能です。非常に使いやすい仕様となっていますので是非お試しください。

(2)登記事項証明書(謄本と言われるものです)

所轄の法務局で取得できます。新築・購入した時に司法書士から受領していると思います。

(3)契約書のコピー(新築の場合には工事請負契約書、購入の場合には売買契約書)

6)Q&Aコーナー

【Q1】土地の取得にも住宅取得資金の贈与の非課税制度は利用できますか?

住宅用建物の敷地である土地にも利用できます。ただし建物を取得することが前提となります。例えば夫が土地を取得、妻が建物を建築した場合などには、夫は建物を取得していませんから、土地の取得時に非課税は利用できません。

【Q2】新築の場合にしか住宅取得資金の贈与の非課税制度は利用できませんか?

新築住宅の建築や購入だけでなく、中古住宅の購入や増改築等も対象となります。

【Q3】贈与税の申告を忘れたらどうなりますか?

申告期限を過ぎてしまった場合には、災害等のやむを得ない事情がない限り、贈与税の非課税枠や相続時精算課税の特別控除は利用できません。絶対に忘れないようにしましょう!






まとめ

【1】新築または購入をする住宅取得資金の贈与の非課税となる金額を把握しましょう。

【2】贈与してもらう金額を確定しましょう。

【3】将来相続税が発生するか把握しましょう。

【4】相続を見据えた贈与方法を検討しましょう。相続時精算課税制度が有利とは限りません。

【5】贈与税の申告を忘れないように早めに準備しましょう。

 

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他