株の税率の仕組みって?税理士が監修する株の全体像

多くの人に馴染みのある投資のひとつが株ですが、株からの収益については比較的税金が優遇されています。株への税率は時期によって変動があるため、常に最新の動向を意識しましょう。株に関わる人が知っておくべき株の税率の仕組みについて紹介します。






1)株で発生する税金の種類

【1】所得税

株で発生する税金の代表が所得税です。株を所有することで受けられる配当金や、譲渡(売買)によって発生する利益に対して発生します。税率は株から発生した所得額の15.315%と決まっています。

【2】住民税

所得税と同様に、配当金や譲渡に伴う利益に対して発生します。こちらは株から発生した所得額の5%と定められています。

【3】贈与税

個人的に株の贈与を受けた場合、他の贈与財産を含めて年間110万円を超える場合に課税されます。累進税率になっており、税率は10~55%です。

【4】相続税

家族からの相続があった場合には、株にも相続税が発生します。他の相続財産と含めて課税されることになります。税率は累進税率で10~55%ですが、贈与税に比較して税率が上がる際の所得額が大きく設定されていて、贈与よりも有利になります。

2)株で所得税・住民税が発生するとき

【1】株式配当

株式を持っていることによって得られる配当金に対しては税金が発生します。ただし、同じ配当だとしても、現品による配当については税金は発生しません。

【2】譲渡所得

株式の譲渡(売買)によって所得が発生し、それに伴って所得税や住民税が発生します。あくまで譲渡時点までは所得が確定しないため、株を取得した時点では税金は発生しません。

【3】ストックオプション

ストックオプションは、予め定められた価格(権利行使価格)で一定の期間内に一定数の株式を購入できる権利で、法人が役員をはじめとして従業員への報酬として付与する場合があります。報酬ではありますが、基本的に株式として扱いますので、譲渡などによる所得が発生するまでは税金は発生しません。

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3)知っておきたい株の配当金への課税方式

上場株式の配当金については、次の3つの課税方式のうちいずれか有利な方式を選択できることになっています。

【1】総合課税

確定申告を行い、給与所得・不動産所得などの総合課税の対象となる所得を合算した総所得金額から、各種所得控除を差し引いて課税総所得金額を計算し、累進税率を適用して税額を算出する課税方式。

【2】申告分離課税

他の所得と分離して、株による課税所得金額に一定の税率を適用して税額を算出する課税方式。

【3】申告不要

確定申告をしないで源泉徴収税額のみで課税を確定させる方式。

【4】有利と見られる場合は?

申告者自身の税金を考えると、課税総所得金額が900万円以下の場合は総合課税が有利になります。課税総所得金額が900万円超の場合は申告不要が有利になります。申告分離課税が有利になる可能性があるのは、上場株式等の譲渡損失に係る損益通算や繰越控除の適用がある場合になります。

4)株は取引口座を選ぶことも大切

【1】一般口座

一般口座は、年間を通して発生した取引についての年間取引報告を自分で作成する必要があります。自分で証券会社ごとの収入や取得費などを算出して記入していく必要があり、ハードルが高いです。そのため、「一般」という名称ではありますが今はあまり選ばれていません。

【2】特定口座(源泉徴収なし)

特定口座は源泉徴収があるタイプとないタイプに分かれています。特定口座(源泉徴収なし)で取引された株については、確定申告で税額を確定させる必要があります。しかし、年間取引報告書を証券会社が作って発行してくれるため、煩雑さが無く、初心者におすすめです。

【3】特定口座(源泉徴収あり)

源泉徴収ありの特定口座では、所得の発生時に都度税額が計算されて差し引かれていきますので、確定申告で改めて税申告をする必要がありません。ただし、諸条件によっては確定申告をすると還付を受けられる場合もありますので注意が必要です。

【4】NISA口座

NISAは「毎年120万円まで、最大5年間、株などの譲渡所得や配当金を非課税にできる制度」です。そのNISAの利用のために作られる口座を特別にNISA口座と呼ぶことがあります。NISA口座は上記の一般口座や特定口座に含まれます。NISA口座の開設は20歳以上となっていますが、20歳未満でも開設可能な、NISA口座をコンパクトにしたジュニアNISAという制度もあります。

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5)株の税計算シミュレーション

株の税計算を簡単な例でシミュレーションしてみましょう。

取得価格:2000万円

譲渡価格:2550万円

手数料など:50万円

給与所得:300万円

この場合、所得税・住民税額は、

2550万円-(2000万円+50万円)×20.315%=101.575万円

になり、また給与所得にかかる所得税は計算は省きますが、20.25万円となります。年間の合計の所得税額は121.825万円となります。申告不要の方式を取れば、この税額で決定しますが、総合課税方式の場合、給与所得と株からの譲渡所得を合算して、

(300万円+500万円(株式による譲渡所得))×23%-63.6万円=120.4万円

となり、申告不要のケースと比較して14250円税金が安くなります。また、もしもこの株式をNISA口座で運用していた場合、年間120万円の枠内になりますので、すべて非課税にすることが可能です。

6)Q&A

【Q1】非上場株の場合は税率はどう考えたらいいでしょうか?

非上場株の場合も税率についての扱いは同じです。ただし、上場株式と違って株価の評価が難しかったり、また取引を成立させるための手数料などが高くなるなど、取引が難しくなります。

【Q2】株の税率は有利と言われるのはどうしてですか?

株の税率は、2013年までは軽減税率が適用されて10%でしたので、他の金融商品に比べ税率が安くなっていました。今は20%(+復興所得税)に戻って他の金融商品と差がありませんが、NISAが使えるメリットが大きいため、比較的有利になっています。また、有利な課税方式を選べたり、繰越や特例などが多いのも有利とされる理由です。

【Q3】株は保有しても税金はかからないですか?

株の保有については非課税です。ただし、保有することで配当金が発生すると金額によって課税の対象になりますので注意してください。

【Q4】株の税率はどうしてよく変わるのですか?

株は投資の中でも比較的わかりやすく、また直接的に企業や産業の支援に繋がって景気浮揚効果も高いために、政府が税率を優遇することで経済を刺激しようと考えるためです。税制は頻繁に変わりますので、都度情報をキャッチアップしておくと投資機会を掴むことができます。

【Q5】iDeCoは株と関係ありますか?

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、個人の年金を運用するものです。掛金を運営管理機関に個人や企業が積立て、それを運営管理機関が運用して年金に当てることができます。その運用の中には株式投資も含まれますが、iDeCoの運用益はすべて非課税となっています。iDeCoでは株を運用していますが、使用するレベルでは株とは別物と考えた方がスッキリします。






まとめ

【1】株で発生するのは「所得税」「住民税」「贈与税」「相続税」

【2】所得税は現在、所得の15.315%、住民税は5%、

【3】株では配当金や譲渡所得の発生時に税金が発生する

【4】株は課税方式によって税率が変わるので、有利な方式を選ぶべし

【5】特定口座を選ぶと確定申告が楽になる

【6】NISAを活用すると最大5年、毎年120万円まで非課税となる

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他