【最新版】セルフメディケーション税制とは?特徴の5つを解説

セルフメディケーション税制とはという言葉はご存知でしょうか。2017年1月1日から、「セルフメディケーション税制」という医療費控除の特例制度が始まりました。セルフメディケーションとは、直訳すると「自己治療」。今回はセルフメディケーション税制について解説していきます。






1)セルフメディケーション税制とは

【1】セルフメディケーション税制導入

2017年1月1日から、「セルフメディケーション税制」という医療費控除の特例制度が始まりました。セルフメディケーションとは、直訳すると「自己治療」となりますが、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)では定義されています。

日本においても、厚生労働省は、軽い風邪などの体調不良や軽いケガなどは、すぐに医師の診断や治療を受けるのではなく、薬局で販売されている薬で治すようにする国民によるセルフメディケーションを推進しています。

そのため、国は健康管理を普段から心がけ、病気やケガを未然に防ぐことをするような取り組みが重要であると啓発しています。

国が推進しているこのような背景には、少子高齢化などにより、国民の医療費がどんどん増え、将来的に国の医療保険制度の破綻の危機が予想されるため、国民のセルフメディケーションにより国民の医療費を軽減を図ることを目的としてます。

【2】医療費控除とは

セルフメディケーション税制について説明する前に、医療費控除について説明します。医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に、生計を同じくする家族が支払った医療費の合計が一定の金額を超えた場合に、「所得控除(減税)」を受けることができる制度です。

「医療費控除額」は、1年間の医療費の合計額(交通費を含む)から保険金などの補填金額と10万円(総所得金額が200万円以下の人はその5%)を差し引いた金額となり、上限は200万円です。平成29年度分からの確定申告は「医療費控除の明細書」のみで領収書の添付が不必要となりましたが、領収書の5年間の保管は引き続き義務付けられています。

【3】セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制は、国民の自発的健康管理や、疾病予防の促進・医療の適正化につながることを目的に「医療費控除の特例」として導入されました。健康の維持増進および疾病への予防の取り組みとして「一定の取り組み(健康診断を受けるなど)」を行う個人が、スイッチOTC医薬品(処方箋なしで買える市販薬)を購入した際に、その購入費用について「所得控除(減税)」を受けることができる制度です。

対象の期間は平成29年1月1日から令和3(平成33)年12月31日(元号未定で平成表示)までの5年間限定となっており、対象となる品目は約1700品目となっています。セルフメディケーション税制分の医療費控除額は、支払った購入費用から1万2000円を引いた金額が対象となります。ただし上限は8万8000円で、確定申告時に当該取り組みを行ったことを明らかにする書類を添付または提示する必要があります。

また、自己又は生計を一にする配偶者その他の親族のための購入費用も、一定の金額の所得控除(医療費控除)を受けることができます。注意すべき点は、セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、従来の医療費控除との選択適用となることです。つまり、この特例の適用を受ける場合、現行の医療費控除の適用を受けることはできないことになります。

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2)セルフメディケーション税制の適用を受けるための要件

【1】適用を受けられる納税者

セルフメディケーション税制の適用を受けようとする年分に健康の維持増進及び疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている個人が対象となります。所得税や住民税を納めていて、自身の健康管理を普段から心がけ、病気やケガを未然に防ぐことをするような取り組みをしていることが必要なのです。

それを「セルフメディケーション税制」では「一定の取組」として、以下の5つのいずれかを受けていることが要件になります。

①健康診査(健康保険組合、市町村国保等が行なう人間ドック等)

②予防接種(インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種等)

③定期健康診断(勤務先で行なう健診)

④特定健康診断(メタボ健診)や特定保健指導

⑤がん検診(市町村が健康増進事業として行なうもの)

これらは、「セルフメディケーション税制」の適用を受けて所得控除を受けようとしている本人が、「一定の取組」を行う必要があり、確定申告の際には書類の提出が必要になります。

【2】特定一般用医薬品等購入費の範囲

特定一般用医薬品等購入費とはスイッチOTC医薬品の購入費をいいます。また、一部の製品には関係団体の自主的な取組により、対象である識別マークが掲載されています。

詳細についてはこの後で説明します。

デスクで仕事をする男性

3)対象となる医薬品はどんなもの?

「セルフメディケーション税制」の対象となる医薬品のことを「スイッチOTC医薬品」といいます。OTCとは、「Over the Counter」の略で、店舗のカウンター越しに販売することです。つまり「薬局などでの対面販売」のことです。

スイッチとは、「切換え」という意味ですが、従来は医師の処方がなければ手に入らなかった医療用医薬品が、薬剤師への相談のみでお店で手に入る医薬品になるということです。つまり店頭販売が可能な一般医薬品等に切り替えられたということを表しています。

そして、「セルフメディケーション税制」の対象となる医薬品は、このような一般医薬品等のうち厚生労働大臣が財務大臣と協議して指定した一定の成分を有するものに限られています。対象医薬品の「品目一覧」が厚生労働省のホームページで、「現在、約1700品目が対象」と公表されていますが、「品目一覧」をみても、専門家ではないとどの医薬品が対象なのかわかりません。

そのため、薬局やドラックストアで購入する際に、対象医薬品かどうかを判断できるように、識別マークをパッケージや値札などに表示することになっています。失敗例として、「セルフメディケーション税制」の対象と聞いて買ってみたものの、セルフメディケーション税制の対象医薬品ではなかったということがあります。それは、同じ商品名でもその医薬品の中に入っている成分で対象医薬品かどうか分かれるからです。

そのため、パッケージに「セルフメディケーション税制対象商品」と表示されているかどうかが重要となりますので、必ず確認してから購入してください。

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4)従来の医療費控除よりもお得になる?

【1】どのくらいお得になるのか

医療費控除かセルフメディケーション税制、どちらかを選ぶに当たって、まず「医療費」については医療費の領収書を、「スイッチOTC医薬品」については対象品目(商品に識別が掲載)の購入費用の領収書を1年間保管することになります。

医療費の合計が年間10万円を超える人は、1年間が終わった後に両方を計算して、「セルフメディケーション税制」か「従来の医療費控除」のどちらが多く所得控除されて税金がお得になるのかを選択することになります。

ただし、双方の領収書を「医療費」と「スイッチOTC医薬品」別々に金額を合計し、計算して比較してみなければどちらがお得になるのかは分かりません。

そこで目安となる金額が、医療費の合計金額が10万円を超え18万8000円までの間は、どちらがお得になるのか計算が必要となりますが、18万8000円を超えるなら「医療費控除」がお得になります。

もし、生計を同一にしている家族が本人しかいない場合は、このようにどちらがお得か試算してみてください。

【2】お得な裏技について

医療費控除の医療費が10万円超えているし、セルフメディケーション税制の対象医薬品も1万2000円を超えている場合は、選択制なので原則どちらかを選択することになります。ただし、これらの制度は家族で分けて確定申告が可能なので、お父さんが医療費控除、お母さんがセルフメディケーション税制と分けて控除を受けることができます。

さらに、控除額が多い方を、収入が多い家族が受けることでさらに節税効果は高くなりますので、節税効果が最も高い組み合わせを検討してみてください。

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5)セルフメディケーション税制の適用を受けるための手続きとは?

「セルフメディケーション税制」は、年末調整で所得控除を受けることはできません。自分自身でセルフメディケーション税制の適用に関する事項を記載した確定申告書を税務署に提出しなければならないのです。

その際に、セルフメディケーション税制の対象医薬品の購入代金を証明するために「医療費購入費の明細書」と一定の取組を行なっていることを証明するために「領収書」または「結果通知表」を確定申告書に添付する必要があります。

【1】医療費購入費の明細書

セルフメディケーション税制の対象となるスイッチOTC医薬品を購入した際のレシートや領収書から「医療費購入費の明細書」を作成します。「医療費購入費の明細書」の書式は指定されていませんが、下記の内容が記載されていることが必要です。

・購入年月日
・対象医薬品名
・購入金額
・購入店舗 など

薬局やドラッグストアでもらうレシートや領収書は、税務署に提出する必要はありませんが、確定申告の期限から5年間の保存が必要です。税務署から提示を求められることがありますのできちんと保管しておいてください。

レシートや領収書を5年間持っているのが大変という方は、確定申告書と一緒に提出しても問題はありませんが、税務署は「セルフメディケーション税制の明細書」を作成し、提出することで、レシートや領収書の提出を省略していくための方針となりますので、年間分をひとまとめに保管しておくことをおススメします。

【2】「一定の取組」を行ったことを明らかにする書類

セルフメディケーション税制の適用を受ける本人が、その適用を受けようとする年分に「一定の取組」を行ったことを明らかにする書類が必要です。インフルエンザの予防接種などは、「レシート」「領収書」になりますが、会社で健康診断を受けたなどは、「結果通知表」が必要になります。「結果通知表」が次の記載があるか確認してみてください。

・氏名

・取組を行った年

・取組に係る事業を行った保険者、事業者若しくは市区町村の名称

・取組に係る診察を行った医療機関の名称若しくは医師の氏名

健康診断等の結果通知表は、コピーでの提出が可能で、健康診断の結果部分は必要ありません。なぜなら健康診断などの取組を行っているかどうかが「セルフメディケーション税制」の要件になるからです。もちろん、結果通知表の健康診断の結果部分を黒塗りなどしたコピーでも差し支えありません。






まとめ

・セルフメディケーション税制分の医療費控除額は、支払った購入費用から1万2000円を引いた金額が対象となり上限は8万8000円である。

・セルフメディケーション税制の適用を受けるには、その年に健康の維持増進及び疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている必要がある。

・選択制なので医療費控除かセルフメディケーション税制かどちらかを選択することになる。ただし、家族で分ければどちらも申告が可能である。

・年末調整で所得控除を受けることはできないので、サラリーマンであっても確定申告書を税務署に提出しなければならない。レシートや領収書などは提出不要であるが、証拠となる書類は5年間の保管が必要となる。

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他