【全解説】法人企業が本気で取り入れたい節税対策10選

法人企業の節税対策には、手軽なものから準備や経営戦略が求められるものまで幅広くあります。企業利益の追求は当然ではありますが、社員に手厚い会社ほど、法人税の軽減が図れる仕組みが取れています。今回は数多くある節税対策の中でも特に取り入れて欲しいものを厳選して解説していきます。






1)法人税について

まず始めに基本となる法人税について説明します。法人税とは、法人(会社)の所得に対して課せられる税金のことで、計算式は下記にようになります。

「法人の所得」=「益金」-「損金」

「法人税」=「法人の所得」×「法人税率」

法人の所得とは各事業年度の益金(収入)から損金(原価、費用、損失など)を引いた金額のことで、法人税は、その所得に対して定められた法人税率をかけて法人税を計算します。もちろん益金(収入)が多くても仕入れ値などの損金が大きくなれば、益金はないので税金はかかりません。

法人税の基本税率は23%ですが、年800万円以下の所得である中小法人の場合は、19%と軽減されますが、実際には、この法人税率に、住民税、事業税が加わるため、実効税率は約30%以上になります。

単純計算ですが、目安として1年間の所得が1,000万円だった場合は、法人税は約300万円になる計算です。

スーツの男性と計算機

2)法人企業による節税対策リスト10選

【1】チェックリスト1:役員報酬で節税

(1)所得税と法人税の税率の違い

法人企業の場合、会社から役員には役員報酬として支払われます。その役員報酬は給与所得になりますので、給与所得控除(65~220万円)が適用され節税が図れます。給与所得は累進課税のため所得が上がればその分、所得税・住民税が増えてしまいますが、給与所得が1,000万円であれば、給与所得控除として最大220万円分の控除を受けることができます。

ただし、4,000万円以上になると所得税は最大税率の45%になり、法人税の実効税率30%より15%近く多く支払うことになる一方、給与所得控除は最大220万円のままなので逆に増税となってしまします。

そこで、法人税率と所得税率の違いを利用して、役員報酬の所得税率を法人税の実効税率30%を越えないようにし、給与所得控除の恩恵を最大限受けられるよう上手に組み合わせることで効果的に節税が図れます。

(2)所得を家族と分散することで節税

経営者と親族に給与を分散することにより、税負担を低く抑えることができます。所得税は累進課税制をとっているので、高い税率が適用されないよう所得を分散することで所得税率を抑えられます。さらに給与所得控除(65~220 万円)は分散した親族それぞれに適用できる上に、給与所得控除分は、住民税(10%)分についても節税となるため、節税効果は大きなものになります。

【2】チェックリスト2:退職金による税制メリット

(1)退職金の税率

5年以上勤務した役員に対しては、退職金を支払うことで退職所得として有利な税制が受けられます。それは退職所得が老後の生活保障という観点から税制上優遇されているからです。

退職金支給額から退職所得控除を差し引いた所得額をさらに1/2にした金額に課税される上に、他の所得と分離して課税されるため累進課税率を低く抑えられる最強の節税方法と言えます。いかに退職金を有効活用するかどうかが法人企業の節税効果を上げるコツになります。

(2)退職金支払による節税効果

退職金の受取りは退職所得として課税されますが、例えば勤続20年で、1,00万円を退職金として受け取った場合、退職所得にかかる税金はおよそ15万円になります。

一方、同額を法人から給与として受け取った場合は193万円もかかります。この例だけでも退職所得の税制メリットの大きさが分かるかと思います。ただし、勤続年数が5年以下である役員等については、この優遇措置が制限されますので注意してください。

【3】チェックリスト3:法人生命保険の活用による節税

(1)退職金との組み合わせによる活用

個人事業主の場合、加入する保険は経費として認められません。また生命保険料控除は最大で年12万円までしか受けられませんが、法人企業の場合は、保険商品によって全額または半額損金算入が可能となり、利益を繰り延べることができます。

あくまで利益の繰り延べであるため、解約時や満期時には課税されますが、前述の役員退職金と組み合わせることで、損金算入によるメリットと合わせて大きな節税効果が得られます。さらに効果を上げる対策として、短期前払費用の特例制度を利用することで、法人生命保険の経費を次年度1年分まるまる損金経費にすることもできます。

(2)退職金の準備としての活用

退職金を支払うためには計画的な資金準備が必要となります。そこで退職金の費用を法人生命保険を利用することで、節税しながら準備することができます。それは毎年の(法人)生命保険の掛け金の全額もしくは一部を法人の経費にしながらも掛金の総額は将来90~100%戻ってくる法人生命保険のメリットを活かした方法です。

実際は10%損している場合もありますが、それ以上に毎年の掛け金を経費にできる節税効果と退職所得で受け時の所得控除を合わせて受けられるので、大きな節税対策になります。さらに、掛金全額を受け取る時には法人の利益として計上されないように、そのまま社長の退職金として支払うことで、受取額による利益と退職金による経費を相殺できるメリットもあります。

【4】チェックリスト4:欠損金の繰越控除

事業開始時には赤字になるケースは多いですが、その赤字は将来、事業が軌道に乗り利益が出てきた時に、利益から差し引くことができます。個人事業主が 3年間の繰り越しであるのに対して、法企業の場合は9年間の繰り越しが認められるため大きな税制メリットとなります。

平成 28年度の税制改正により、平成30年4月1日以降に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされました。もし10年間の利益と相殺しきれない場合は節税の機会を失ってしまいます。

そこで黒字を増やす方法としては、含み益のある資産の売却方法があり、例えば含み益のある有価証券や解約返戻金が見込める生命保険があれば、売却または解約することで欠損金との相殺に活用することができます。

【5】チェックリスト5:消費税の納税義務免除

消費税は、売上等に係る消費税額から仕入れ等にかかる消費税額を控除した額となります。原則、個人事業主として開業した場合、2事業年度は消費税の免除を受けることができます。しかし年間課税売上高が 1,000万円を超えた場合は、課税事業者となり2年後の申告において消費税を納める必要が出てきます。

そこで、課税事業者になる年の前年に法人会社を設立することで、会社設立直後の半年間の売上や給与などの支払総額が 1,000万円を超えるなどの要件に該当しなければ、会社設立後の2期分の消費税が免除され、合計すると最大4年間免税することができます。これは法人化する大きな理由と言われています。

電卓を指差すビジネスマン

【6】チェックリスト6:未払費用・未払金の計上

当期中に発生した費用を、支払い自体は翌期としながらも、経費は当期決算期に計上することができます。

これができる経費としては、給料、通信費、広告宣伝費、リース料、保険料、消耗品費などがありますが、人件費である給与は金額的に大きく節税効果が高いです。

例えば、会社の給料の締め日が毎月の月末で、支払い日が翌月の20日ならば、当期最終月の給料は未払い給与となり、決算時に経費に計上できます。また、社会保険料も同様に、月末締め切りの翌月末払いなので未払い費用として会社負担分を費用計上できます。

経費の増加により利益の圧縮ができますので、節税対策となります。もちろん、費用計上のタイミングの違いだけなので結局は払うものではありますが、費用を先に計上し、納税を先送りにすることは、企業における運転資金の捻出などの観点からもメリットがあります。

【7】チェックリスト7:出張を使った節税

出張がある会社の場合、出張旅費規定を実費精算ではなく出張日当の支給に切り替えることで、旅費交通費として損金算入できる上に、接待費がある程度含まれていても損金不算入額に含めなくてよくなります。

また、出張日当は、法人経費として計上することができ、受け取った社員は所得税等の税金がかからず、消費税法上も課税仕入とされるので、非課税給与とできます。このように出張日当には3つの相乗効果があるのです。

例えば、出張日当が5,000円で年間20日の出張があったとすると、5,000円×20日=10万円が法人の経費とでき、一方、社員は税金のかからない10万円の所得となるのです。ただし、出張規程により役職、距離、手段などに応じた日当の金額を取り決めておく必要があります。

【8】チェックリスト8:慰安旅行を使った節税

普段の仕事を労って業員を慰安するため旅行へ行ったとした場合、個人事業主だとこの旅行代金は事業の費用とはなりませんが、法人企業の場合は、「旅行期間は4泊5日以内」「旅行費用は1人10万円以下」等の一定の条件を満たすと、福利厚生費として経費計上することができます。10万円×10人=100万円かかったとして、税率30%だと30万円の節税になります。

【9】チェックリスト9:別会社を設立して節税

別会社の設立は、運営戦略の正当性が担保されていることが前提となりますが、別会社で運営した方が将来的な利益が見込める場合の節税対策です。メリットとしては以下の4点が挙げられます。

・資本金1億円以下の会社は、年間800万円までの所得について法人税の税率が軽減される。

・資本金1億円以下の会社は、30万円未満の消耗品が年間300万円まで一括経費として計上できる。

・資本金1,000万円未満の会社の設立時、第1期目と第2期目の消費税が免税となる。

・別会社に役員や従業員を転籍させた時、元の会社では退職金の計上が可能となる。

以上のように、2重で法人税や所得税の節税対策が図れることになり、効果は絶大なものとなります。

【10】チェックリスト10:中小企業倒産防止共済への加入

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入は、節税はもちろんですが連鎖倒産によるリスクを軽減できる対策となります。例えば取引先の倒産により、多額の売掛金が回収できずに倒産してしまうリスクはいつでも存在します。その場合、中小企業倒産防止共済に加入することで、取引先が倒産して売掛金の回収が困難になった場合でも、共済金の貸付が受けられます。

また、節税効果としては、共済金の掛け金は最大、年間240万円まで全額損金算入が可能となり、12ヵ月以上加入により解約手当金が受け取れます。解約手当金の受け取りは益金となるため課税対象になりますが、加入期間が40ヵ月以上であれば掛け金の100%をどのタイミングでも受け取ることができるため、節税対策を講じやすくなります。

このように損金算入できるのが年240万円と法人保険に比べると低額ではありますが、損金を全額算入できる上、倒産のリスク軽減できるので加入するメリットは大きいと言えます。






この記事のチェックポイント

【1】法人企業は消費税の2年間免除を受けられる。個人事業主として消費税が課税されるタイミングが、法人企業に転換する良いタイミングになる

【2】役員報酬は、所得税と法人税の税率の違いや給与所得控除のメリットを生かした効果的な支給を考える

【3】退職金は最強の節税対策なので最大限生かせるよう、生命保険との組み合わせにより、節税と準備資金、両方のメリットを得る

【4】赤字の繰越は最大10年間可能となり、事業が軌道に乗るまでの猶予期間が長くなり、将来的な利益との相殺がしやすくなる

【5】その他、職員を優遇することで節税効果は高くなります。職員のモチベーションを高め、雇用安定は企業成長にとって必須条件と受け止めましょう

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他