不動産の相続に関する手順まとめ!税務面での注意6つ

ほとんどの方は土地を相続する機会は少なく、いざその時になるとどうしたらよいのか分からないのではないでしょうか。特に不動産の相続の場合は分からず進めてしまうと「あの時こうしていれば良かった」と後悔するケースは多くあります。そのため、今回は不動産相続の流れや税務面について詳しく解説します。






1)不動産相続に関わる手続き

【1】相続発生、その時に何をするべきか?

相続人として相続が発生した場合、最初にするべきことは市区町村役場へ死亡届を提出することです。被相続人が亡くなられてから7日間以内の提出が法律で義務付けられていますので、遅れることのないようにしてください。

次にやるべきことは、遺言書が残されているかどうか確認することになります。遺言書が残されている場合とそうでない場合ではこの後の手続きも変わってきます。せっかく相続手続きが終わったのに後から遺言書が見つかったような場合、さらに苦労することになりかねません。大変な時期だからこそしっかりと確認するようにしてください。

【2】相続人全員の戸籍謄本 最優先でやるべきこと

不動産相続は死亡届や遺言書もそうですが、何をするにあたっても書類が必要になってきます。まずは誰が相続人としての権利を有しているのかを確定させるために、相続人全員の戸籍謄本を集める必要があります。被相続人については出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要になりますので、もし転居を繰り返しているケースでは集めるのに労力と時間が掛かる場合があります。

ひとつでも書類が欠けますと相続の手続きがストップしてしまいますので、時間が掛かる可能性がある戸籍謄本は真っ先に集めることをおススメします。

2)土地を相続したら名義変更・相続税申告・準確定申告

相続した土地に関係する手続きは名義変更・相続税申告・準確定申告の3つです。
ただし、後述しますが相続税申告および準確定申告については必ずしもすべての人が行う必要はありません。詳細について後述しますので必要な手続きは何なのかを明確にしておいてください。

【1】名義変更

名義変更はその名の通り土地の名義を変更するものです。例えば相続した土地の所有者が父名義であったら自分名義に変更するといったものです。

名義変更は必ず行う必要がなく期限もありませんが、名義変更をしないことで生じるデメリットもあるため、名義変更はできるだけやっておくことをおススメします。

(1)名義変更(相続登記)

名義変更は様々あり、中でも相続した土地の名義変更は相続登記と呼ばれています。名前だけみると難しいように見えますが、名義変更は自分一人でもできる手続きです。

やることは役所で書類を取り、書類を作成して法務局に提出するだけです。ただし仕事の都合などで役所から書類を取得するのが難しかったり、資料を作成するのが難しいと感じた場合は、専門家である司法書士に頼むことも可能です。

(2)名義変更(相続登記)をした方がいい人

名義変更(相続登記)をするべき人は下記に当てはまる人になります。
①相続した土地を売りたい
②土地を担保にしてお金を借りたい(抵当権を設定したい)
③土地を貸付したい
④相続した土地を他の相続人に勝手に売られて権利関係で揉めたくない
⑤土地の上に家を建てたい
⑥相続した土地を子や妻に贈与したい
今挙げたこれらのことは土地の名義人でなければできないことなので、土地を活用したり勝手に土地を活用されて権利関係で揉めたくない人は名義変更をすることをオススメします。

(3)名義変更(相続登記)しなかった場合のデメリット

名義変更(相続登記)のデメリットは以下の内容になります。

①土地を有効活用できない(担保にできない・お金を借入できない・売却できない・貸付できない)
②権利関係で揉める(他の相続人が勝手に自分の持分だけを売り、土地全体が使えなくなるなど)

つまり名義変更することで、このようなデメリットを無くすことができます。

(4)名義変更(相続登記)で集めるべき書類

名義変更(相続登記)をする際に提出する書類は、以下の10種類の書類です。この資料をさらに分類すると、役所から集める・自分で集めるものの2つに分けられます。これらの資料をすべてまとめて法務局に提出すれば、名義変更は完了します。

名義変更で必要な書類

【役所で入手するもの(集めるべき書類)】

①戸籍謄本(相続人全員分)
②印鑑証明書(相続人全員分)
③住民票(相続人全員分)
④戸籍謄本(被相続人のもの)
⑤住民票の除票(被相続人のもの)
⑥固定資産評価証明書
⑦不動産の全部事項証明書

【自分で作成するもの】

⑧遺産分割協議書(遺言書がある場合には不要)
⑨登記申請書
⑩相続関係説明図

ただし、これらはどれも集めなければいけないというわけではありません。遺言書があったり、戸籍の記載によっては必要な書類や枚数が異なります。

(5)名義変更をするべきタイミングは相続税申告後

なぜ複数の相続人で土地を分割する場合のみ相続税申告後に名義変更をするべきかというと、相続税を減額できるかどうかという問題があるからです。例えば、1つの土地を姉と妹で相続した場合を例に挙げてみます。

相続税申告は土地の評価をするのですが、名義変更をする前だと評価を有利(節税)にできる可能性があります。姉と妹で土地をどう分けるか(分筆するか)、小規模宅地等の特例という大幅に土地の評価を下げることができる特例をどう使うかなど節税のためのテクニックを使うことが可能になります。

一旦、名義変更をしてしまうと節税のためのテクニックを使うことが難しくなるため、名義変更は相続税の申告が終わった後にすることをおススメします。ただし、土地を一人で相続する場合は、名義変更してもしなくとも、節税のためのテクニック(評価減)は使えるため、どのタイミングで名義変更しても問題はありません。

【2】相続税申告

相続税申告は、土地や現金などすべての財産を含めて3,600万円以上相続した場合に必要な可能性のある手続きです。
2015年の税制改正により「私は財産もってないから大丈夫」と思われるような人も相続税申告をしなければいけない可能性が高まりましたので関係ないと思わず本当に手続きしなければいけないか、金額などは後述しますので確認しておいてください。

【3】準確定申告

準確定申告は貸アパートや駐車場など、被相続人(死亡された方)が収益を得ていた土地を相続したときに必要準確定申告を簡単に言うと「被相続人(死亡された方)の代わりに、確定申告をする」ものです。

例えば、被相続人が2019年の8月に死亡すると、1~8月までに発生したアパートや駐車場からの収入が発生します。通常、確定申告は1~12月の間に発生した収益を3月に申告しますが、アパートを貸していた人が死亡すると、その時に発生した収益を申告できません。

そのため土地を相続した人が代わりに申告することを準確定申告と言います。

3)相続税・登記費用って?不動産相続にまつわる費用

【1】相続税

不動産を相続するにあたって気になるのが相続税や、手続きにかかる費用のことかと思います。以前は相続税の対象になるのはほんの一部の人に限られると言われており、実際に相続税が非課税の方が大半であったのは事実です。

しかし平成27年に相続税が改正され基礎控除の金額が40%も減額されていることから、相続税の申告対象の方も増えていますので注意が必要です。改正後の相続税の基礎控除額は以下の計算式で求めることができます。

【相続税の控除額の計算式】

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

簡単な例でいうと、たとえば法定相続人が5人いた場合、3,000万円+(600万円×5人)=6,000万円が相続税の基礎控除額となります。
改正前の計算ですと基礎控除額は1億円でしたので、ずいぶんと控除額が減ってしまっているのが分かります。
相続資産の相続税評価額の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の納税義務が生じます。

【2】相続税以外の費用

相続した土地の名義変更(相続登記)にかかる費用は、相続した土地の価額や集める資料の多さによって変わりますので、一概にいくら必要とは言えませんが、必要な費用は下記のとおりとなります。

(1)戸籍謄本等書類の取得費用や郵送費用

資料の発行手数料は1枚500円前後ですが、相続人が多く取得する資料が多かったり、郵送で取り寄せることが多いと、その分費用はかかります。
おおよそ5,000円~10,000円あれば、すべての資料を取得可能です。

(2)土地の名義変更に関わる税金(登録免許税)

登録免許税という税金を支払わなければいけません。支払うべき税金は「土地の価額 × 0.4%」で求められます。土地の価額は集めた資料の中にある固定資産評価証明書に記載されています。これらの費用の合計は相続税評価額によって大きく変わってきますが、仮に評価額が3,000万円の不動産を相続した場合、おおむね20万円を少し超える程度が目安となります。

(3)司法書士報酬(手続き代行を依頼した場合)

ちなみに登録免許税が発生する相続登記申請の手続きは、自分ですることもできますが、専門的な知識も必要となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士へ支払う報酬の目安は5万円前後です。ここまでの説明で不動産相続の大まかな流れと必要書類および費用について掴めてきたかと思います。

3)不動産を分割相続する4つの方法

【1】分割相続の種類

相続人が複数いる場合遺産分割が原則となりますが、相続資産が現金であれば分割して相続するのはそれほど複雑ではありません。しかし不動産となると現金のように簡単に分けるわけにはいきませんので、なにか方法を検討する必要があります。そこで、不動産相続の際の遺産分割方法として主なものは4種類あります。

①現物分割
②代償分割
③換価分割
④共有

それぞれの内容について次に説明します。

【2】現物分割

現物分割は、文字通り不動産を複数に分割して、それぞれを現物で相続する方法です。
土地だけの相続の場合、分割後も普通に利用可能な面積があるのであれば検討の価値はありますが、狭い土地の場合は別の方法を検討するのが賢明です。

【3】代償分割

代償分割は、一部の相続人が不動産をそのまま相続し、他の相続人に土地代を現金で支払うという方法です。不動産を分割し難い事情がある場合や、相続人の中に不動産現物よりも現金で相続したいという方がいる場合に有効な選択肢となります。

【4】換価分割

換価分割は、相続した不動産を売却し得られた代金を複数の相続人で分割する方法です。不動産現物のままでは難しかった分割でも、現金化してしまえば分割するのは簡単になります。

不動産の買い手が見つかったうえで、相続人全員が納得する金額で売却できることが前提となりますが、その不動産に相続人の誰かが居住するといった利用予定がないのであれば、有力な選択肢のひとつとなります。

【5】共有

共有は、複数の相続人の共有名義のままにして不動産を相続する方法です。相続は相続人の共有状態で相続しますので、相続人間で揉めないようであれば、このままにしておく方法もあります。

ただし、後になって不動産を売却する場合に共有名義人全員の同意が必要となるといった理由からトラブルの元にもなりやすいという側面もありますので注意してください。

4)土地のみを相続する場合のチェックポイント

【1】土地相続の方法

土地のみを相続する場合、先述した4つの方法全てに可能性があると言えます。建物がない分、戸建て相続と比較すると、割合シンプルに考えることができるからです。現物分割は土地を二筆にわけるといった方法で実現可能ですし、代償分割、換価分割、共有のいずれも基本的には相続人同意の上、選択することができます。

ただし、相続方法が比較的シンプルな反面、土地相続ならではの注意事項もありますので、これから説明する注意点もしっかりとチェックするようにしてください。

【2】土地相続における注意点

土地を相続する場合、いったん相続手続きを実行してしまいますと後からの変更が非常に難しくなることに気を付けなければなりません。たとえば一度土地を他人に売却してしまえば、後から買戻しをすることはほぼ不可能となります。また、土地の価格は驚くほどに変動する場合もあります。

代償分割で相続時に平等に分割したつもりでも、後から土地が思いのほか値上がりし、他の相続人に不満が生じるケースもあります。

土地の相続はなかなか難しい面を有しているのは事実ですが、事前に相続人同士でしっかりと合意しておくことで余計なトラブルを回避することができます。

【3】土地にまつわる税金の話

土地を現物で相続した場合、相続税や登記費用の支払いだけですべてが終わるわけではありません。当然ではありますが、相続した翌年からは固定資産税がかかってくるということを忘れないようにしてください。相続税評価額が高い土地を相続した場合、相続税が高額なのはもちろんですが、毎年の固定資産税の負担も相応のものが待っています。

現在の収入や土地活用などで固定資産税分を捻出できるかといったことを、相続前に検討しておくことも必要となります。特に注意すべき点が、小規模住宅用地の特例を受けられない更地の場合は課税標準額が固定資産税評価額の6分の1となる軽減措置がないために、住宅用地に比べて固定資産税額は高額となることです。

一般住宅で小規模宅地等の特例を無意識に受けている固定資産税の感覚でいると、想定外に高額な固定資産税に戸惑うことになりかねません。また相続した土地を売却して譲渡益を得た場合、売却の翌年度に譲渡所得税がかかります。

【譲渡所得税の計算式】

譲渡所得=売却代金―(土地の取得費+土地の譲渡費用)

土地を売却してから税金がかかるまでにタイムラグあります。譲渡益が生じた場合は納税資金を準備しておかないと後で困ることになるので注意が必要です。

住宅のない土地を相続する場合には税金面についてもしっかりと事前に検討、準備しておく必要があります。相続した土地を有効に活かすことで、安定的な収入を数十年に渡って得ることができます。まずは、あなたが相続した土地の収益の可能性を検討するために、土地活用の収益プランの提案を受けてみてみるのも大事になります。

5)戸建て物件を相続する場合のチェックポイント

【1】戸建て相続の方法

戸建て物件の相続の方法は、土地の上に建物が建っているため、土地の相続とは勝手が違います。先述した4つの分割方法のうち、現物分割を除いた方法から選択することとなるかと思います。代償分割は親と子のうちの一人が同居している場合で、そのまま居住を続ける場合によく用いられます。

小規模宅地の特例で相続税の軽減が図れるメリットもありますが、ほかの相続人に代償を支払う資金力が必要になります。一方、換価分割は小規模宅地の特例を利用できずに譲渡所得税まで課せられてしまう可能性がありますが、売却金を分割しやすいというメリットがあります。

共有による相続は、やはりその場は丸く収まりやすいのですが、後になってさらなる相続が発生した場合、権利関係が複雑化する懸念がありますので注意してください。

【2】 戸建て相続における注意点

戸建ての相続で、複数の相続人がいる場合は注意が必要です。相続が発生してから対応したのではトラブルになりがちです。どの分割方法であってもトラブルの火種は隠されているため、戸建て物件の相続は、被相続人の存命中に納得のいく話し合いをしたうえで、遺言書を残してもらうことが理想です。

また、場合によっては、必ずしも法定相続分にこだわらずに各相続人が納得のいく形で調整することも良い方法です。相続人の誰かが譲歩することで最適な戸建ての相続が実現する場合もあります。

【3】戸建て物件の税金について

両親が居住していた戸建て物件を相続した場合、とりあえず空き家としてそのままにしてしまう場合があります。空き家の増加は社会問題として顕在化しつつあり、国としても空き家に対する措置を次々と実行しています。

管理不行き届きな空き家として「特定空き家」に指定され「助言・指導」に従わずにいると住宅用地特例の対象から除外されてしまうこともあります。

そうすると小規模住宅用地の特例がなくなるため、固定資産税が実質4倍程度に跳ね上がってしまいます。こうした状況に陥ることを防ぐための措置も同時に実行に移されています。相続人が空き家物件を売却しやすいように空き家の3,000万円特別控除が平成28年4月1日~令和元年12月31日まで適用されるのです。

相続で空き家物件を相続した人が適用条件を満たした場合は、売却の際の譲渡所得から3,000万円を控除できるというものです。「とりあえず空き家にしておこう」と相続後も放置してしまった場合、こうした特例を受けられなくなる可能性があります。

またペナルティー的に高額な固定資産税負担を強いられることさえありますから、空き家のままの相続には気を付ける必要があります。

6)マンションを相続する場合のチェックポイント

【1】マンション相続の方法

マンションの相続方法は戸建てと同じく、現物分割以外の方法から選ぶことになります。マンションの場合区分所有分の土地の権利は有しているものの、実質的に土地を活用することはできないのが土地、戸建てと大きく異なる点と言えます。

【2】マンション相続時の注意点

マンションの相続で少し気に掛けたほうが良いのは、築年数がかさむと思うような価格で賃貸もできなくなってしまう場合もあるということです。新築マンションの供給は続いており、中古マンションでは築年数が増すにつれ借り手を見つけるのも徐々に難しくなってきます。

修繕積立金や管理費の負担も考えますと、居住の予定が無い限りなるべく早い段階で賃貸にすることも検討したほうが良いかもしれません。借り手がいる限り毎月の不労所得を得ることができますので、先ずは人に貸すことを考えることをおススメします。






まとめ

・相続が発生したらまずは死亡届を提出し、遺言書の有無を確認する。
・土地の名義変更に必要となる書類を揃える手間がかかるため、メリット、デメリットを踏まえて効率的に準備を行うと良い。
・不動産相続の際の遺産分割方法として4種類あり、①現物分割、②代償分割、③換価分割
、④共有があり、どの方法がメリットが大きいのか検討すると良い。
・相続する土地が、土地のみ、戸建て、マンションかによっても注意すべきことが異なる。
・相続税は法改正により支払いが発生するケースが急増しているため、事前に相続対策、資金の準備を行っておく必要がある。

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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ABOUTこの記事をかいた人

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他