社宅を経費として上手に節税する4ステップまとめ

多くの現代人の生活の中で、一番多くの比率を占める経費、住居費。それを雇用主が負担することで、従業員の生活は格段に楽になる、社員に喜ばれる福利厚生です。その社宅を使用することが、節税効果もあるということはご存知でしょうか?






1)そもそも社宅とは?

【1】社宅の定義と分類って?

社宅とは、会社が相場より安い賃料で住居を従業員に提供する制度で、従業員の福利厚生、転勤者、遠隔地出身者の住居として用いられます。大きく分けて、借り上げ社宅、住宅手当に分けられます。

【2】借り上げ社宅・住宅手当の違い

(1)借り上げ社宅

企業が不動産事業主や業者から賃貸住居を借り、社員に貸し出す住居のことです。家賃の支払い、契約の更新、従業員からの社宅費用の徴収、給料からの天引きなどは会社が行います。

(2)住宅手当

会社は、住宅手当を給与に上乗せし、賃貸借契約の締結、家賃の支払いなどは従業員が行います。

中でも借り上げ住宅の場合、一定の金額を経費として落とすことで節税効果があるといわれていますが、どういうことなのか以下で検討していきたいと思います。

2)社宅で経費になるメカニズムとは?

【1】元々の給与の金額から家賃の会社負担分だけ減額

まず、必ず「会社名義で」賃貸借契約を締結します。従業員がその物件に居住した場合に、役員、従業員は全額負担する必要はなく、家賃の一部を会社が負担してくれます。まさにその部分が「経費」となるので、この基本は忘れないでください。但し、会社の全額負担は認められておらず、必ず従業員、役員の負担部分を定めるようにしてください。

会社が社宅を用意し、家賃の一部を会社が負担する場合には、元々の給与の金額から、家賃の会社負担分だけ減額するので、役員、従業員の所得税が節税できます。また、給与の額によって増減する社会保険料なども下げることができます。仮に月収30万円、本来の相場によると家賃は10万円であるところ、会社が9割負担、本人負担は1割である場合、30万―9万=月収21万円をもとに計算することができます。会社側は売り上げを減らすことができます。

【2】就業規則などに書いておくと安心

「会社は家賃をいくらまで負担するか」、あるいは「家賃の会社と従業員の負担割合」、そそて、「光熱費、管理費などは誰が負担するか」、「家族など、社宅に住む権利のある人は誰なのか」などを明確に定め、会社と役員、従業員間のトラブルを防ぐと同時に、税務調査が入った場合に証拠書類となります。

指をさす 女性

3)要チェック!節税にならないケースも?

【1】算出した金額以上の家賃相当額を徴収する必要

(1)従業員に社宅を貸した場合

(その年度の建物の固定資産標準額)×0.2%

12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))

(その年度の敷地の固定資産標準額)×0.22%

上記の計算式で求めた合計金額よりも受け取っている家賃が少ない場合、賃料相当額と実際に受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。固定資産標準額とは、毎年1月1日における固定資産の価格として、各市町村の都税事務所、市町村役場などに備え付けてある固定資産台帳に登録されており、所有者、借主は閲覧することができます。

具体的には「3つの式の合計=6万円」「従業員の月々の負担額=2万円」「6万―2万=4万円」は、給与とみなされ、課税されます。

(2)役員に社宅を貸した場合

社宅が「小規模宅地(耐用年数が30年以下の場合は床面積132㎡以下、耐用年数が30年を超える場合は床面積99㎡以下の場合」」に当たる際には、従業員に貸した場合と同じ計算法です。「小規模宅地」に当たらない場合には、

・自社所有の社宅の場合

{(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%}+{(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%}

・会社が不動産業者等から借りている住居の場合

会社が家主に支払う家賃の50%と①の計算結果とのいずれか大きい金額となります。建物の耐用年数は、建物の構造により異なります。木造であれば、22年、れんが、石であれば38年、RCであれば47年です。中古住宅の場合、耐用年数を何年経過しているかご注意ください。

【2】家賃以外の料金は含まれない

水道代、電気ガスなどの光熱費、駐車場代などは従業員、役員本人の負担となり、会社が経費とすることはできません。

【3】従業員・役員の予期しない退職リスク

会社は賃貸借契約をする際、敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料など、少なくない費用を払っていることが多いです。また、年数がたてば、更新手数料も発生し、これも会社負担です。しかし、売り上げを減らすことで節税できた額が、このような諸費用に達するまでに役員、従業員が退職してしまった場合、「元が取れない」結果となります。

【4】社会保険のケース

都道府県ごとに定められた1畳あたりの標準価額以上の賃料を従業員が負担している場合は、会社が負担している分の家賃には社会保険料は課税されません。標準価額というのは、たとえば東京都であれば、1畳あたり2,400円です。それ以上の賃料を従業員が負担していれば、問題ありません。

4)社宅にした場合の実際の節税シミュレーション

【1】役員・従業員側

給与:       50万円
社会保険料:    △6万円
所得税;      △4万円
住民税:      △3万円
社宅家賃:     △2万円
手取り:      35万円

社会保険6万円+所得税4万円=10万円の節税、節約

【2】会社側

給与:       50万円
社会保険料:     6万円
家賃;       10万円
役員、従業員負担分:△2万円

家賃10万円―役員、従業員負担分2万円=利益8万円ダウン→法人税の節税

【3】会社の利益はただ下げればいいというものではない

信用を得るため、上場を目指す、などという場合には、売り上げをむやみに下げすぎないほうがいいことがありますので、節税と、「今後の事業のために必要な金額」、「会社の目指す方向性」などを総合的に考えて、負担額、人数などを考えで下さい。一方、役員、従業員の方も、今後住宅ローンを組む予定がある、など、「見た目の収入」が下がることが望ましくない場合には、避けたほうがいい場合もあります。

社員 考える

5)社宅を選ぶ上でのポイントとは?

【1】ポイント1:できるだけ「小規模住宅」に該当するものを選ぶこと

特に役員の場合に重要です。

(1)3)【1】(2)で述べたように、社宅が小規模住宅か否かによって、最低限の自己負担額の計算方法が変わります。小規模住宅といえるためには、以下の条件に該当する物件を選んでください。

建物の耐用年数が30年以下の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅

建物の耐用年数が30年を超える場合には床面積が99平方メートル以下である住宅

【2】ポイント2:豪華住宅に該当しないこと

豪華社宅とは、例えば240平方メートルを超える広い物権、プールや、地下のワイン用倉庫など個人の嗜好を強く反映した場合などが該当します。

【3】ポイント3:1畳あたりの標準価額以上の賃料を従業員が負担すること

社会保険では、都道府県ごとに定められた1畳あたりの標準価額以上の賃料を従業員が負担している場合は、会社が負担している分の家賃には社会保険料は課税されません。

6)注意点ってある?

【1】住宅ローンが使えない

法人が物件を購入する際、利率が1%以下の住宅ローンは使えず、金利2.5~5%の事業用ローンしか使えません。それでも節税する意味がある場合、あるいはローンを使わず購入できる場合に限った方がよいでしょう。

【2】売却する際に売却益が発生して課税される

個人所有の不動産であれば、購入から売却までに値上がりしても3,000万円の特別控除があり、非課税となりますが、法人にはありません。売却益にそのまま法人税がかかります。売却損が出た場合には、個人であれ、法人であれ、所得税、法人税がそれぞれ安くなります。

【3】空室・解約リスクがある

近年では、良くも悪くも雇用の流動性が上昇し、転職をする方が増加しています。また、会社側も、不景気時の雇用調整ができるよう、短期間の派遣社員などを使用しているケースが多いです。

そのような場合、会社側の人員整理の他、従業員の意思により退職者が増え、結果社宅の空室率が増加、という事態が考えられます。それに加え、長期借り上げの場合には、契約年数が決まっているケースも多く、家賃保障がある状態で空室が増えた、続いた場合や、契約期限終了前の解約に対して高額な違約金が発生する可能性もあります。

スーツ姿 家

7)社宅を経費として上手に節税する方法Q&A

【Q1】従業員です。社宅が節税上得なことはわかりましたが、人間関係がわずらわしいので住みたくありません。住宅手当をもらったほうがありがたいのですが・・

最近の借り上げ社宅の制度は、多くの場合は、一定の条件の範囲内で、借りることになる本人が物件を選び、会社に指定する方式をとることで、駅から近く、賑わっていて便利なところがよいか、人通りの静かな住宅街がよいか、など借主となる人の好みを反映することができるケースが多いです。

【Q2】経営者です。社宅とする物件を是非取得したいのですが、会社名義ということになると、入居者が何か問題を起こした場合、責任を取らないといけないのでしょうか?

はい。安い住居費と、仕事と住居両方を変えなければならない、という煩わしさから、従業員の定着率は上がると思われますが、一方で責任も発生します。よって、入居者はよく人柄を理解した、信頼できる人を選ぶよう気をつけて下さい。

【Q3】従業員の負担をなるべく少なくして、会社の経費分をできる限り増やしたいのですが、どのくらい経費としても問題ないでしょうか?

上記計算式に基づいて計算すると、実際支払う家賃の10%~15%ほどとなるため、20%を従業員から徴収、80%経費とする、位であればこれまでの例からして安全と言えます。






まとめ

社宅の使用による節税は、うまくやれば会社と役員、従業員双方のメリットとなるウィン・ウィンの関係を構築できるといえます。ただ、空室リスクや、売却時の売却益の問題など、不動産投資と同様の問題も含んでいます。よって、どのくらいの規模で行うか、などは、一社一社の個別の状況に応じてじっくり考える必要があるかと思います。必要なときには経験豊富な専門家に相談するなど、皆様がこの制度をうまく使われることを願っています。

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髙村健一

1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他

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1973年4月26日神奈川県生まれ。髙村税理士事務所代表・株式会社トラストコンサルティング代表取締役。オーナー系企業・個人の富裕層向け税務コンサルティング、アドバイザリー業務を得意分野とする。LEC東京リーガルマインドの講師など、全国で講演活動やセミナーを実施。研修講演等実績:大同生命・ジブラルタ生命・三井住友海上あいおい生命・アクサ生命他。執筆実績:清文社「間違わない事業承継Q&A」(共著)・観光経済新聞社「税肉を落とす」日本金融通信社「ニッキンマネー・節税のノウハウ」他